金融危機到来に備えて中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する国は?

世界3,000万部のベストセラー「金持ち父さん貧乏父さん(Rich Dad Poor Dad)」の著者でその金融理論に信奉者の多いバート・キヨサキ(Robert Kiyosaki)氏は、「価値の保存」目的としてビットコイン(BTC)に注目しています。新型コロナウイルスは、世界の企業に過去数十年で1回あるかないかという大打撃を与えていますが、金融エキスパートはそれ以上の悪化を予測し始めています。金融大危機に備えて世界の中央銀行は何をしようとしているのでしょうか?

46カ国の中央銀行が何らかの形のデジタル通貨の開発を目指す

キヨサキ氏は、すべての銀行システムの崩壊と米ドル(USD)の完全な価値の下落につながる大きな危機を予測しています。同氏は資産保護のために、デジタル通貨あるいは貴金属を含む代替手段を直ちに「価値の保存」目的に利用することを勧めています。

法定通貨は、デジタル化の急伸や新型コロナの第2波の影響を受けて、本来あるべき価値が目に見えて下落し始めています。特に米ドルの価値の下落は、それが世界に最も受け入れられている通貨ということから、銀行にとどまらず金融全体の崩壊につながりかねません。

多くの国や中央銀行は、ありうる金融システム崩壊を避けるため自前のデジタルコインの発行に目を向けています。英エコノミスト誌の金融雑誌「セントラルバンキング(Central Banking)」のリポートによると、世界の46カ国の中央銀行が、デジタル通貨を何らかの形で開発しようとしています。

中銀デジタル通貨(CBDC)発行は中国など数カ国で最終段階へ

同リポートによると、世界の全銀行の65%が熱心にデジタル通貨を調査・研究していますが、その多くは今日まで、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)を発行する意図は持っていません。回答者の71%は、CBDCを発行するにしてもブロックチェーン技術の基づいたステーブルコインを目指してはいないことが分かりました。

ブロックチェーンコンソーシアムR3が4月末実施したCBDC調査報告書によると、数カ国がすでに発行に向けた実践的段階に入っています。例えば中国は、デジタル人民元を開発中です。スウェーデンもまたイークローナ(e-krona)、オランダはデジタルユーロの発行を強く推奨しています。米国はデジタルドルの発行に関心を示していますが、タイムラインは明らかにしていません。隣国カナダはCBDC発行に本格的に取り組んでいます。

CBDC発行気運はFacebookのリブラと新型コロナウイルスまん延が動機

国際決済銀行(BIS)は先週末リポートを公表して、CBDCの研究・開発は今年特に注目されていると報告しています。39ページにも及ぶリポートは、CBDCを「金融機関の間の新しい決済手段になりうる」とし、175余りの中央銀行の内世界人口の5分の1に相当する中銀がデジタル通貨の発行を考慮しており、5分の1の中銀(約35行)は1~6年内にCBDCを発行する構えであると報告しています。

BISによると、このような気運はFacebookによるデジタル通貨「リブラ(Libra)」発行計画、そして新型コロナウイルスのパンデミックが原因となって一段と高まったとされています。ここまで中国、スウェーデン、カナダの3カ国がCBDCの実地テストを完了し、13カ国が銀行間テスト開始を進め、さらに18カ国はデジタル通貨が経済に与える影響などの研究リポートを公表しています。

参考
Major Crisis Coming: Global Whales Turn to Bitcoin
Over 20% Of Central Banks Are Looking to Launch A CBDC In The Next 1-6 Years: BIS Report

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