DeFi(分散型金融)およびイールドファーミング(流動性マイニング)が急成長するにつれて、規制上のリスクが高まっています。経営コンサルタント企業ボストンコンサルティンググループ(BCG)とCrypto.comによる共同研究(9月9日公表)によると、DeFiの急成長はマネーロンダリングの可能性を生み出し、規制当局が注目する結果になると指摘しています。
DeFiは中央集権型金融を脅かす
「突如台頭したDeFi:金融サービスのチャンスとリスク(The Sudden Rise of DeFi: Opportunities and Risks for Financial Services)」と題したこのリポートは、DeFiの成長を促した要因、中央集権型金融(CeFi)に及ぼす影響などを分析しています。
Crypto.comの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のクリス・マルスザレク(Kris Marszalek)氏は、DeFi急成長の理由、中央集権型金融との差異、メインストリームの金融を脅かす可能性などについてリポートの中で深く考察したと述べています。
またBCG Platformのマネージングディレクターであるカージ・バーチャルディ(Kaj Burchardi)氏は「流動性の現行レベルを明らかにし、規制の進め方の方針を決め、リスクレベルを判定することによって、企業はサービスがより分散化したモデルに取って代わるかどうかを評価することができる」とコメントしています。
DeFiでロックされた仮想通貨は年初来1200%増、90億ドルに
データ会社DeFi Pulseによると、今年初め以来DeFiプラットフォーム上で担保付ロックされた仮想通貨のドル価値は、9月中旬には年初以来1200%伸びて90億ドルに成長しています。DeFiはそもそも、規制当局の許可を必要としない分散型であり、中央集権型の取引所とは違って、ユーザーのKYC(顧客確認)を必要としません。
共同研究リポートによると、DeFiは政府や規制管理の枠外で運用されることから、金融サービスへの違法なアクセスへの懸念もあります。サイファートレース(Ciphertrace)はこの点に関して、「DeFiプロトコルは、認可なしで運用されており、どこの国でも誰でも規制上のコンプライアンスを必要とせずにアクセスできる。その結果、資金洗浄者にとってDeFiは容易に天国になりうる」と警告しています。
DeFiの肥大化は規制当局者の監視強化と規制につながる?
DeFiは、ガバナンスを含めて完全な形の分散化を実現できるならば、規制を逃れることが可能です。しかし、DeFiプロトコルの規模とガバナンスは現状では、完全な分散化の意味で大きく異なっています。
例えば、イーサリアム(Ethereum)上でETHやERC20トークンと交換するユニスワップ(Uniswap)など一部のプロトコルは、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)やユニオンスクエアベンチャーズ(Union Square Ventures)など高度に中央集権化した企業からベンチャー資金の支援を受けています。
世界の規制当局者が、大規模に成長するDeFiに今や監視の目を向けるのではないかという恐れがあります。サイファートレースは「DeFiは規模が大きくなれば、結果的に世界の規制当事者の監視下に置かれる」とコメントしています。DeFiが今後どう展開するか、注目されます。
参考
・Crypto.com and Boston Consulting Group (BCG) Release New Report on Decentralized Finance (DeFi)
・The Sudden Rise of DeFi: Opportunities and Risks for Financial Services
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