本連載では、複数回のシリーズ企画として「Microsoft、復活する巨大企業とブロックチェーン」と題して、マイクロソフト(Microsoft)のブロックチェーン関連の取り組みについてオーバービューと考察を行っていきます。
エンタープライズ向けではないブロックチェーン
Microsoftは、エンタープライズ向けにブロックチェーンに関連するソリューションを提供しています。しかし、ブロックチェーンは、そもそもエンタープライズ向けにデザインされていなければ、設計思想自体が、非中央集権やトラストレス、分散性といった要素がエンタープライズに向いていません。
上記のMicrosoft DeveloperというYouTubeチャンネルに投稿された動画では、従来のITのアーキテクチャに合わないこれらを企業のために橋渡しを行うことがMicrosoftの取り組みであると解説しいます。
そのうえで具体的にMicrosoftが、エンタープライズ向けにどのような取り組みをしているか見てみましょう。
Microsoftが発表した「Azure Blockchain Workbench」とは?
Microsoftは2018年5月に、「Azure Blockchain Workbench」を発表しました。同サービスは、わずか数回のクリックでコンソーシアムネットワークを構成、デプロイできるとしています。
Workbenchの自動台帳デプロイとネットワーク構築、既成のブロックチェーンコマンドは、開発/テストでの調査に最適であり、インフラストラクチャーの開発時間が大幅に短縮されます。
一言でこれを説明するならば、POAタイプのコンソーシアムブロックチェーン、プライベートブロックチェーンの開発キットだと言えます。
また公式ブログによると、利用者は例えば以下のことができるとしています。
- ブロックチェーンを用いたアイデンティティ。コンソーシアムの中で利用可能な認証アイデンティティシステム。
- スマートコントラクトで条件付けを行い任意のイベント発生時に処理を行うシステム。
- 署名とハッシュ、ルーティングツールを使用して、メッセージをブロックチェーンのネイティブAPIが認識する形式に変換。
- オンチェーンデータと、オフチェーンデータベースと同期させることで、ビジネスで使いやすくする。
- Logic Appsなどのツールを使用して、既存のシステムやアプリケーションとブロックチェーンワークフローを簡単に統合。
- RESTベースのAPIとメッセージベースのAPIをブロックチェーンで使えるようにする。
サーバーレスでブロックチェーンの開発可能なキット
さらにMicrosoftは2018年11月、「Azure Blockchain Development Kit」というサーバーレスでブロックチェーン開発ができるキットをリリースしました。このキットはAzure Blockchain Workbench の機能を拡張するものです。
同製品は、MicrosoftのクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureから、各種サービスをつなげてインターフェースの接続、データとシステムの統合、スマートコントラクトとの接続などをシームレスに可能にします。
また、オフチェーンにあるデータとの統合もAzureのプロダクトで実現可能であり、現実世界のユースケースに沿っています。検証・監査をしやすいスマートコントラクトの形式認証も提供するといいます。
今回のサービスは、Microsoftが以前にエンタープライズシステムの統合にBizTalkを開発し、データベースの統合をするため、ODBCの共同開発をした経験が、ブロックチェーン領域にも反映されているといいます。
連載「Microsoft、復活する巨大企業とブロックチェーン」
☆第1回~新たなミッションを掲げ再起を図る
★第2回~エンタープライズ向けのサービスとは?
Microsoft社は2018年12月18日(火)に、HashHubとNeutrinoとの共催でブロックチェーンビジネスサミットを開催します。ブロックチェーンの社会実装にフォーカスしたパネル、エンジニア向けハンズオン、懇親会など内容を予定しています。イベントの申し込みはこちらから。