トヨタが上海モーターショーで、電気自動車(EV)の新しいシリーズを発表しました。これを機に電気自動車のラインナップを揃えて、本格的に販売に乗り出すようで、注目されています。
この記事では、トヨタの電気自動車と、新型電気自動車の動向について解説します。
トヨタの新作電気自動車bZ4X(トヨタ ビーズィーフォーエックス)とは?
新たに電気自動車のシリーズをトヨタが発表しました。それが、TOYOTA bZです。bZとはbeyond Zeroの略ですが、二酸化炭素の排出をゼロにするだけではなく、「単なるZero Emissionを超えた価値をお客様にお届けしたい」という思いが込められています。
このbZシリーズの開発は、BYD、ダイハツ、SUBARU、スズキの4社とパートナーを組んでおり、共同で開発を進めることによって、さまざまな大きさ、スタイルの電気自動車を導入するとしています。
そして、上海モーターショーで、2021年4月19日に姿を見せたのが、TOYOTA bZの第1弾となるコンセプト車両、TOYOTA bZ4Xです。
bZ4Xは、SUBARUと共同開発をしています。新AWDシステムを採用したSUVタイプの電気自動車で、スペックはまだ発表になっていませんが、トヨタの既存モデルでいえば、RAV4クラスのボディサイズをもつSUVをイメージさせます。
プラットフォームには、SUBARUと共同で開発した電気自動車専用のプラットフォームであるe-TNGAを使い、ショートオーバーハングとロングホイールベース化によって、広々としたDセグメント並みの室内空間を確保しています。
室内に目を向ければ、低いインストルメントパネルや広い後部座席スペースによって開放的なインテリアになっています。そして、何より特徴的なのが、量産車としては世界初となる異形ハンドルです。ハンドルとステアリングを完全に切り離したステアバイワイヤを採用しており、走行時にハンドルを持ち替える必要がありません。これによって、より安全でスムーズな運転を可能にします。
走りについてもトヨタは「電動車ならではの素早いレスポンスを生かした安全で気持ちの良い走りと、高い走破性を実現」したとしていますので、乗り心地についても期待できるでしょう。
気になる走行距離ですが、回生エネルギーの活用と停車中に充電ができるソーラー充電システムも採用することで、不便を感じない航続距離を確保しています。生産は日本と中国で行い、2022年の半ばまでにグローバルで発売をする計画です。
トヨタの電気自動車の種類は?
トヨタには、車の動力のすべて、または一部に電気モーターを使っている電動車が4種類あります。ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車の4種類ですが、それぞれの電動車の特徴とラインアップを紹介します。
ハイブリッド車(HV車)
一般的なハイブリッド車とは、ガソリンエンジンと電気モーターの2つの動力を備えた自動車で、トヨタが今まで得意としてきたのがこのタイプです。ラインアップも豊富で、コンパクトカーのアクアやヤリス、セダンタイプのプリウスやカムリ、カローラ、ミニバンのアルファードやヴォクシーなど、さまざまな車種があります。
プラグインハイブリッド車(PHEV)
ハイブリッド車は外部電源による充電ができませんが、プラグインハイブリッド車は外部電源による充電も可能にしたものです。ガソリンエンジンを搭載していますが、ガソリンを使わずに、電気だけを使い、モーターで走行することも可能です。プリウスPHVとRAV4 PHVがあります。
電気自動車(EV車)
電気自動車は、バッテリーに蓄えた電気を使い、モーターだけを動力とします。そのため、走行中には二酸化炭素をまったく排出しません。トヨタでは、超小型電気自動車のC+podがありますが、一般にはまだ発売されていません。ここに、今回、上海モーターショーで発表されたbZシリーズが加わります。
燃料電池自動車(FCV)
水素を燃料として発電し、電気モーターで走行する車両です。水素と酸素とが結びつく化学反応を利用して発電をするので、二酸化炭素を排出することはありません。環境性能は優れていますが、高い車両価格、燃料となる水素を充填するステーションの数が限られているなどの課題があります。トヨタのラインアップには、MIRAIがあります。
トヨタの電気自動車への今後の動向は?
トヨタが世界初の量産型ハイブリッド自動車であるプリウスを発売したのは1997年です。それ以来、2021年2月までに1,700万台以上の電動車を販売しています。そして、現時点では、ハイブリッド車45種類、プラグインハイブリッド車4種類、電気自動車4種類、燃料電池自動車2種類の計55車種のラインナップを揃えるまでになっています。
2018年には、自動車会社からモビリティカンパニーへモデルチェンジすると、トヨタは宣言をしましたが、この宣言以来、電気自動車への取り組みも進んできており、2025年までにbZシリーズ7車種を含む15種類を導入するとしていて、電動車のラインアップは70車種ほどに拡充します。
また、電気自動車については、2020年にすでに、C+podを導入していますが、C+podの特徴は、少人数、近距離の利用に焦点を置いた容量の小さな電池を搭載する超小型電気自動車です。これに対して、今回の上海モーターショーで第一弾となるbZ4Xを発表したbZシリーズは、中国、アメリカ、ヨーロッパなど、電気自動車の需要や再生可能エネルギーによる電力供給が多い地域で、普及させたいとしています。
つまり、さまざまな大きさとスタイルの電気自動車を導入するものであり、SUVであるbZ4Xを皮切りに、今後はラインナップも充実するでしょう。
トヨタの電気自動車が他社より遅れをとっているのはなぜ?
日産リーフ、Honda e、MAZDA MX-30など、各社が量産型の電気自動車を導入するなかで、トヨタには量産型がありません。レクサスブランドで2020年に発売した量産型電気自動車であるUX300eがありますが、これも2020年は135台という台数限定の販売でした。これらが、トヨタが他社より遅れを取っているといわれる所以でしょう。
しかしながら、本当にトヨタは電気自動車で他社よりも遅れを取っているのでしょうか。実は、取り組みは以前からあり、1996年にはRAV4 EVをすでに発売しています。その後も、2012年にはテスラとの共同開発でRAV4 EVをアメリカで販売しました。
また、トヨタにはハイブリッド自動車で培った技術があります。ハイブリッド自動車のモーター、インバーター、トランスミッション、バッテリーなどの主要装備は、電気自動車にも利用できるものです。これらは、アドバンテージと捉えるべきでしょう。
それでは、なぜ今までのトヨタは、電気自動車に消極的に見えたのでしょうか。トヨタには、「プラクティカル(実用的)&サステナブル」というキーワードがあります。つまり、今まで電気自動車は実用的ではなく、ハイブリッド自動車が実用的であったために、ハイブリッド自動車を中心に販売をしてきたのではないでしょうか。
今回、トヨタがTOYOTA bZシリーズを発表した背景には、電気自動車が実用的になったという判断が感じられます。
トヨタの電気自動車への今後の取り組みに注目
トヨタの電気自動車と、新型電気自動車の動向について解説しました。ハイブリッド自動車で培った技術を利用して、TOYOTA bZをはじめとしたプロジェクトを今後どのように進めていくのか、さらなる発表を期待しましょう。