19世紀の西部開拓時代に保安官を務め、「OK牧場の決闘」で冷酷辣腕の主人公を演じたのはワイアット・アープだが、米証券取引委員会(SEC)委員長であるゲイリー・ゲンスラー( Gary Gensler)氏はまさにアープの再現、「投資家を保護する」ことを理由により強固な規制を望んでいると公言しました。ゲンスラー氏の真意を探ってみましょう。
2兆ドルの大型仮想通貨市場は投資家保護が必要
ゲンスラー委員長は12月12日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューに応じて、暗号資産(仮想通貨)の規制問題などについて自説を展開しました。同氏はこれまで、西部開拓時代を好んで引用して、仮想通貨は「金融システムのワイルド・ウエスト(Wild West)である」と表現しました。同氏は、投資家は2兆ドル以上の「ジェシー・ウッドソン・ジェームズ(西部開拓時代の無法ガンマン)」市場から保護されるべきだとも主張しました。
ゲンスラー氏は、仮想通貨トークンは証券法に準拠すべきであると考える理由について、「長年かけて有効性が実証された投資契約そのものであるので、証券法に基づくことになる」という見解です。その意味することはまた、驚異的な数の仮想通貨発行体が、法的な執行措置の対象になるということです。
取引プラットフォームは本来、仮想通貨を売買する場です。しかし対象となるこれらプラットフォームは、単に取引のため以外に多くの働きがあります。その1つがトークンを保管する事業です。さらにプラットフォームは時には顧客基盤に反する取引実行の場にもなります。その取引プラットフォームは、伝統的な株式取引所とは技術的に異なる設定となっています。
投資家保護の主たる目標とは詐欺や市場操作からの保護
ゲンスラー氏は、民間人としては「そのエコシステムからしてイノベーションに非常に関心を持っている」とコメントしていますが、(ゲンスラー氏のような)「公的機関の参加者」ということになれば、主たる目標の達成に注力する」と次のように語ります。「これら主たる目標は、人工知能(AI)であれ、ロボアドバイザーで使用されるデジタル分析あるいは仲介アプリなどいずれであろうが、消えてなくなることはない」と語ります。
目標とは実際何でしょうか?ゲンスラー氏によると、「それは一般投資家、資本形成、詐欺や市場操作などから保護すること」ですが、SECは投資家を含めて仮想通貨業界に明確な説明を提供することができず、批評家の多くはゲンスラー氏が厳しい見解を示すことによって、将来的に財務長官の地位を狙っているのではないかと疑っています。
SECコミッショナーのへスター・ピアス(Hester Peirce)氏らは、ゲンスラー氏の規制政策に失望しているといわれます。ピアス氏らのコメントによれば、ゲンスラー氏は「仮想通貨に関して沈黙を守ることを通じて、市場は投資家の関心が高まるこの分野への証券法適用に関する継続的な質問を期待できる」との考え方に基づいています。「そのような沈黙は、詐欺師を勇気づける一方、法律を遵守したい良心的な市場参加者を妨げる」というのがコミッショナーらの言い分です。
参考
・Why SEC’s Gensler Views on Crypto Are More Than ‘Disappointing’
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