下位PoWブロックチェーンのリスク
今年は、Proof-of-Work(プルーフ・オブ・ワーク/以下PoW)のコンセンサスアルゴリズムを用いた下位ブロックチェーンには苦しい年になるのではないかという予想が多いです。
2019年の年明け早々にイーサリアム・クラシック(Ethereum Classic)がBlock withholding attackによって、ブロックが巻き戻ったことは周知の通りです。このようにハッシュレートが十分ではないPoWのブロックチェーンは、外部市場からハッシュレートを一時的に調達をされて、攻撃に用いられるリスクがあります。
関連:イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)が51%攻撃受ける、PoS vs PoWの論争を再考
今年、このような攻撃にさらされるブロックチェーンは多く存在することが予想されます。具体的には、SHA256のアルゴリズムを採用していながら、ビットコイン(BTC)よりハッシュレートが引き離されているブロックチェーン(ライトコイン、ビットコインキャッシュ、ビットコインSV)、GPUで採掘できる下位コインは、攻撃可能性が高いと言えます。
これは、上述したようにハッシュレートを外部市場で調達して、Block withholding attackがしやすいためです。
米国の著名ファンド、特にライトコインに強いベア予想
米国の著名ファンドのマルチコイン・キャピタル(Multicoin Capital)は、その中でも特にライトコイン(LTC)に強いベア予想をしています。
参照:DEBUNKING MARKET NARRATIVES: LITECOIN ($LTC) EDITION
彼らがライトコインにネガティブな理由は下記の通りです。
(1)ライトコインの強みの一つは米国最大の取引所コインベース(Coinbase)に上場されていていることだったが、今後コインベースの新規上場ペースが加速して、その強みはライトコイン固有のものではなくなる
(2)ビットコインの利便性がセグウィット(SegWit)とライトニングネットワーク(Lightning Network)のアダプションによって高まり、ライトコインの需要が減少する
(3)ライトニングネットワークがペイメントレイヤーとして実用化され、ビットコインはSoV(価値の保存)、ライトコインはMoE(交換媒体)という棲み分けができなくなる
(4)ライトコインには将来が明るい開発ロードマップがない
(5)需要がないにも関わらず、マイナーは継続的に採掘したライトコインを売却する
(6)マイニング企業大手のビットメイン(Bitmain)はライトコインを100万枚保有しており、同社の経営状態は苦難にあり同社による売り圧力がある
以上が、マルチコイン・キャピタル(Multicoin Capital)がライトコインの将来性は明るくないと考えている理由です。なお、同ファンドはライトコインをショートしていることも開示しています。最近は年間報告書も出しており、これに関しては筆者が別のレポートで解説をしています。
参照:著名クリプトファンドのMulticoin Capitalの2018年の年間報告書を読む
同ファンドによるライトコインの明るくない将来予想は、他のPoWブロックチェーンにも当てはまるものが多いです。通貨型のPoWのブロックチェーンはビットコインにはない価値を見出すこととが急務であり、加えてハッシュレートが低いブロックチェーンはセキュリティをどのように獲得していくかが必要と言えます。
関連
・2019年に立ち上がる暗号通貨のインカムマーケット、PoSに関連する市場
・暗号通貨の相場はすでに機関投資家のOTC取引が主戦場である、という個人投資家が認識すべき事実
HashHubでは、ブロックチェーン業界の起業家・開発者・フリーランスのためのコワーキングスペースも運営をしています。日々の仕事やイベント開催、人との繋がりなど、ブロックチェーン領域で仕事をする人にとっての最適な環境が整っています。利用お問い合わせはHashHubへ。