仮想通貨を発行して資金調達を図るICO(イニシャル・コイン・オファリング)の支援組織ICObenchのレポートによると、中東のアラブ首長国連邦(UAE)が、ICOによる資金調達量で世界トップに躍進しました。UAEはICOを通じて、2019年1-2月だけで約2億1,000万ドル(約233億円)を調達しました。
英国やシンガポールは、引き続きICOの発行数で世界をリードしていますが、調達額ではUAEにはるかに及びませんでした。
2019年1-2月のICO調達額はUAEが圧倒的に1位に
ICObenchの調査によると、UAEは1月、世界のICO調達総額の約3億4,700万ドルの内、何と41%相当の約1億4,200万ドルを調達し、2位のエストニア(約6,400万ドル:19%)に大きく差を付けました。
出典:ICObench
さらに驚くべきことは、UAEの調達はGensis Crypto Blockchain Investment Bank(GCBIB)の1銀行によって行われました。同行の資金調達目的は、必要な規制フレームワークと技術的インフラストラクチャーに完全に準拠する仮想通貨にフレンドリーな銀行を構築することです。
ICOの数は、ビットコインが下落相場に入った18年1月以来落ち込んでいます(例外の8月と11月を除く)。19年1月のICOは159件(18年12月は162件)でした。しかし、資金調達に成功したのは116件であり、年間で見ると最低の数です。116件のICOの平均調達額は1,080万ドル(約12億円)でした。
さらに、ICOを通じる資金調達に要する期間は18年以来、着実に長引いています。これは希望する資金調達が得られるまでに時間を要していることを表しています。19年1月のICO調達期間は95日でしたが、18年1月は平均40日で、実に137%も調達期間が延びたことになります。
出典:ICObench
UAEは仮想通貨・ブロックチェーン産業の最前線にあるとの評価高まる
ブロックチェーン技術や仮想通貨に対するUAEの関心は、上昇傾向にあります。それを裏書きするように19年初め、UAEの銀行はサウジアラビアとの間で、銀行間の相互決済で共同テストの開始を発表しています。
UAEは2月に入ってもICO調達に積極的で、Bolton Coin(ボルトンコイン)が 約6,780万ドル(約75億円)を調達して、世界の調達総額約1億7,800万ドルの38%を占めて1位を堅持しています。
UAEの大手メディアThe National(ザ・ナショナル)は、UAEが19年半ばにはICO規制とともに次のブロックチェーン技術開発ハブになるだろうと予告しています。UAEを構成する首長国アブダビのブロックチェーン技術開発に特化した投資プロジェクトLibra Projectのハンス・フレイキン(Hans Fraikin)最高経営責任者(CEO)は、「UAEは暗号化されたブロックチェーン技術を利用するスタートアップ企業を設立する、最も有望な司法管轄圏になりうる」と述べ、「ICOスペースの世界的リーダーになる完璧な立場にある」と考えています。
ロンドンのファンド運用企業エテルナキャピタル(Eterna Capital)のアンドレア・ボナセト(Andrea Bonaceto)CEOは「UAEは(仮想通貨・ブロックチェーン)産業の最前線にあって、2019年にはICOおよびブロックチェーン関連投資を呼び込む競争力のある立地条件にある」と語っています。
これら専門家は、UAEは将来の持続可能なブロックチェーン部門を創設するため、独自のデベロッパーコミュニティーの開発に注力すべきだと提言しています。
UAEは18年4月、「ブロックチェーン戦略2021」を開始し、21年までにブロックチェーンプラットフォームに政府取引の50%を移管して、ブロックチェーン技術への意欲的な投資を計画しています。UAEはこれによって、①11億ディルハム(約330億円)の政府取引および書類経費節約、②年間3億9,800万枚の書類印刷節約、③年間7,700万労働時間の節約―を実現します。
関連
・ICO支援プロジェクトBinance Launchpadの再開ともたらされる影響
・2018年にブロックチェーンプロジェクト・ICO・STOへの投資を統計した詳細レポートが発表
参考
・ICO Market Monthly Analysis January 2019
・ICO Market Monthly Analysis February 2019
・The Official Portal of the UAE Government