前編では、2018年11月に始まったビットコイン(BTC)価格の暴落の要因について探ってきました。後編では、下落相場回復のカギをに握る機関投資家について考えます。
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ビットコイン(BTC)価格が4,000ドルを割るという大幅下落した市場が回復するカギとなる要因について、さまざまな観測が飛び交っています。小口投資家や個人投資家が、大挙して市場に復帰することはしばらく望めません。頼りになるのは機関投資家の出方でしょう。
機関投資家がマイナーの損益分岐点6,000ドル時点で買い出動
ビットコインおよびテクノロジー研究者のボリス・フリストフ(Boris Hristov)氏は「BTCは80%の修正を耐え抜き、その後大幅に回復したことがある。まさに印象的な回復力だ。今回も同じことが起きる機会はある。しかし、新たな市場修正が起きるたびに、次第に回復が難しくなっていることも事実だ」と述べ、機関投資家はかなりの額の投資をするだろうが、それでも一挙に上方修正するには十分ではないと予測しています。
2018年を通じて、BTCが約6,000ドル前後で安定していた最近まで、それを維持したのは大手マイナー企業と機関投資家であるというのが、大方のアナリストの見方です。ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ(Fundstrat Global Advisors)によると、ビットコインマイナーの損益分岐点は、ROIレベルで今年7,300ドルに達しました。その後ハッシュレートが落ちて分岐点は6,000ドルに落ちました。機関投資家は6,000ドルのレベルでまず買いに入ったようです。
資産運用最大手のフィデリティ(Fidelity)がいち早く、Fidelity Digital Asset Services部門を開設して、機関投資家向けのビットコイン保管ソリューションの開始を発表(18年10月)しました。バークレイズやゴールドマン・サックスが、仮想通貨のトレーディングデスク設置計画を中止したと伝えられましたが、フェイクニュースだと判明しました。相前後してシティグループ、JPモルガン、そしてナスダックなどが、機関投資家向けの仮想通貨関連商品を発売する計画が伝えられました。
小口、個人投資家はビットコイン4,000ドルで売り出動、機関投資家はさらなる下落期待
国際法律事務所Kobre & Kimの著名な弁護士で、仮想通貨や規制に詳しいジェイク・チェルヴィンスキー(Jake Chervinsky)氏は、小口投資家や個人投資家はBTCが4,000ドルの局面で仮想通貨を「売るべきかもっと下がったら買い戻しか?ショートか諦めるべきか?・・・」と迷い、機関投資家は「われわれのために安値のビットコインを売り続けてほしい。感謝」と、ツイッター上で両者の違いを皮肉交じりにツイートしました。
Investors, with bitcoin trading under $4,000:
Retail: "should I sell and buy back lower? should I open a short? should I just give up? is it going to zero? was this whole crypto thing a scam after all?"
Institutions: "please keep selling us cheap bitcoin. thank you."
— Jake Chervinsky (@jchervinsky) 2018年11月25日
チェルヴィンスキー氏の持論は「ビットコインのような投機資産に対して、機関投資家は無防備にロングすることはない。彼らはスポット買いすれば、同時にリスク軽減のためほかの市場にヘッジする」というものです。
機関投資家は概して、厳格な規制上の保管もしくはOTC市場を通じてハイリスクの資産クラスに投資する傾向にあります。ビットコインの場合、流動性が少なくなると、Coinbase CustodyやFidelity Digital Assetsなどの信頼できる保管事業に頼り、BTCを大量に売り買いします。OTC取引所のデータは公開する義務がありませんので、機関投資家がどれほどのビットコインを購入したかなどの情報は知ることができません。
機関投資家の需要は急速に高まるが500億ドル投資でも新たな高値は期待薄
機関投資家は、仮想通貨に単に関心があるからか、それとも長期的な投資としてビットコインを積極的に買い集めているのか確かではありません。保管事業への需要は、仮想通貨に対する機関投資家の需要を正当化する限定的な方法の1つであり、例えばバックト(Bakkt)は「需要は急速に高まっている」と分析しています。
しかし、そのような需要が実際に強く、機関投資家がビットコインを集めていることを定量的に実証することは難しいことです。フリストフ氏は「機関投資家によるありうる投資は、マクロファンドだろう。市場にはCTA(商品取引アドバイザー)ヘッジファンドなど合わせて6,000億ドル(約68兆円)の運用資産残高がある。また別に、2017年に得たヘッジファンド所有コモディティ資産の3,000億ドル(約34兆円)もある。BTCはこちらの範疇に入っている」と説明しています。
これら運用資産を保有する機関投資家が、市場に500億ドル投資すると仮定しましょう。恐らくそうなるでしょうが、ビットコイン価格が新たな高値を付けるのに十分な額だとは言えません。
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