水増しされた取引高
2019年の前半は、世界各国の暗号通貨取引所が取引高を不正に表示していることを示す、研究レポートが複数発表されました。その中でも、ビットワイズ(BitWise)によるレポートは、膨大な研究量とその結果が非常に注目を集めました。
同レポートでは、取引所別に、約定サイズと件数のヒストグラムを作りパターンを調べるなどをして取引ボリュームを調査していました。これによると、世界のビットコイン(BTC)の取引高の95%はフェイクボリュームであるとしています。
また、コインマーケットキャプ(Coinmarketcap)などの一般的な統計サイトに正しい取引高を反映している取引所は、世界でも約10ヶ所しかないとしています。
多くの取引所がフェイクボリュームを報告し取引高を水増しする理由は、多くの顧客を獲得するため、またその見かけ上の取引高に魅了したプロジェクト側からリスティングフィーの収益を得るためであるという動機があります。
下記はサークル・リサーチ(Circle Resarch)によるレポートで、報告取引高と各取引所のサイトPVの比較です。
出典: Circle Research
PVはシミラーウェブ(SimilarWeb)というアナリティクスサービスを用いて算出した目安程度のものであるとはいえ、報告取引高と全く相関性がなく、その理由は取引高のフェイクにあると言えそうです。
取引の透明性を高めようとする情報リソース
こういった報告取引ボリュームの不透明性に対して、透明性を高めようという動きがあり、より信頼できる数字を示そうとする情報リソースがいくつか登場しているので紹介します。
ビーティ―アイ・ベリファイド(BTI Verified)
ビーティ―アイ・ベリファイド(BTI Verified)は、ブロックチェーン透明性研究所(Blockchain Transparency Institute)がローンチした自主規制によって正しい取引高を報告するデータプロバイダです。あらかじめ決められた厳格なルールとAPI接続によって正しい取引高を示そうしています。2019年4月のローンチ時には、クラーケン(Kraken)、コインベース(Coinbase)、ポロ二エックス(Poloniex)、ビットレックス(Bittrex)、リキッド(Liquid)、ゲート(Gate.io)、ビットソー(Bitso)、リッケ(Lykke)の9つの取引所が参加をしました。
リアル10ボリュームズ(Real 10 Volumes)
暗号通貨のデータベースを提供するメサリ(Messari)がローンチをした信頼できる取引所トップ10の出来高を報告するサイトです。
ローンチ時点には、バイナンス(Binance)、ビットフィネックス(Bitfinex)、ビットフライヤー(Bitflyer)、ビッツスタンプ(Bitstamp)、Bittrex、Coinbase Pro、ジェミニ(Gemini)、イットビット(itBit)、Kraken、Poloniexが選出されています。
トランスペアレンシー・スコア(Transparency Score)
ノミクス(Nomics)がローンチした、トランスペアレンシー・スコア(Transparency Score)では、独自の基準で、各取引所をA+~Fで格付けをしています。基準はこちらから参照できます。
なお上位陣として、A+には、アイデックス(IDEX)、ZEBITEX、ダブリューシーエックス(WCX)、ブロックトレード(Blocktrade)があり、AランクになっているのはBinance、Bithumb、Bitfinex、Coinbase、Gate.io、Gemini、Kraken、イーサフィネックス(Ethfinex) 、Poloniexなどです。
解決されるべき問題
長い間、使用されてきたCoinmarketCapに慣れているトレーダーも多いと思いますが、より信頼できるリソースが必要な際は上記のようなサイトも使用して、使い分けると良いでしょう。このような取引高のボリュームのフェイク問題は業界としては、暗号通貨が新しいアセットクラスとして認められるためには、解決されるべき深刻な問題であるといえます。
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参照
・BitWise
・Circle Research
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