仮想通貨業界と銀行は水と油の関係、打開の糸口はブロックチェーンか?

仮想通貨の関連企業特にブロックチェーン技術開発関連企業が、世界中で続々誕生していますが、銀行など金融機関は、依然としてこれらスタートアップ企業への金融サービスに冷淡です。これは政府の規制当局が、信頼できる規制ガイドラインの作成に戸惑っていることと無縁ではありません。

ビットコイン(BTC)の価格・相場・チャート

米中小銀行で進むブロックチェーン受け入れの機運、大手はなお自主規制

ビットコイン(BTC)価格が2019年4月初旬以来、5,000ドル台(約55万円)まで回復、5月には8,000ドル(約88万円)を超える強気相場となって、市場に期待感があふれています。特にブロックチェーン関連企業の数が増え、事業が成功する可能性が高いことから、銀行はサービスを提供する大きな機会が生まれています。

米国西海岸のサンディエゴを拠点とする大手投資ファンドのシルバーゲート銀行(Silvergate Bank)は、仮想通貨に理解を示す銀行の1つであり、広くブロックチェーン関連企業を募り、現在までに500以上のクライアントを抱えています。しかしこれに倣う銀行の数はまだ少なく、大手銀行はほとんどすべて仮想通貨関連企業との付き合いを自主規制しているのが現状です。

シルバーゲート銀行が米証券取引員会(SEC)に提出したIPO目論見書によると、仮想通貨関連企業顧客の預金残高は2018年12月31日時点で、542のクライアントを抱え、通年で約1億5,000万ドル(約11%)増加しました。

懸念は資金洗浄やボラティリティ、KYC規制も大きな壁に

金融機関が仮想通貨関連企業を避ける理由はいくつかあります。その1つは、マネーロンダリング(資金洗浄)や麻薬取引などの犯罪行為について、仮想通貨市場が関係しているという長年の通念があります。さらに、金融業界の多くが、仮想通貨のボラティリティ(価格変動)が株式市場などと比べて大きいというリスクを懸念しています。

そして恐らく最も大きな理由は、KYC(本人確認)規制あるいは外国投資家筋からの所得追跡など、複雑なコンプライアンス規制処理対応の難しさがあります。

世界は仮想通貨を受け入れる適切な規制の確立へ

銀行は長年にわたり、ビジネスモデルに対する脅威としてブロックチェーンを見てきたので、仮想通貨の成長を推奨する組織や団体・機関と協調する動機はほとんどありません。そのような銀行の最も好例は、JPモルガン・チェースであり、その最高経営責任者(CEO)であるジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)氏はかつて、ビットコインンを所有する社員はすべて「首にする」と発言、仮想通貨を「詐欺」と非難しました。そのJPモルガンすら今では、JPMコインを発行する変身ぶりです。

世界の政府の多くは、仮想通貨事業に適切な規制措置を確立する必要性を徐々に受け入れ始めています。例えばスイスがそうでしょう。スイスは仮想通関に対するガバナンスのルールを定め、スイスの銀行は、迅速にこの分野に参入しています。バーレーンとジブラルタルもまた、同様の動きを示しています。

仮想通貨業界を嫌う銀行は自己責任でそうしている

銀行が仮想通貨企業を受け入れる動機が必要というなら、恐らく最大の動機は仮想通貨の潜在的利益でしょう。これら企業を受け入れて、大きな利益を上げている数少ない銀行がシルバーゲート銀行です。同銀は2018年末までに、これら企業から前年比180%増の17億ドル(約1,900億円)の資金を預かっています。同銀のクライアントは、クラーケン(Kraken)やコインベース(Coinbase)、ビットレックス(Bittrex)の他に多数の仮想通貨投資家です。

ブロックチェーンの採用は、まだ揺籃期でしょうが、仮想通貨が新しい恒久的なアセットクラスになる可能性は大きいようです。

この事実を無視する選択をする銀行は、自己責任でそうする訳です。仮想通貨が主流になることがあれば、そのような銀行も仮想通貨関連企業を受け入れざるを得ない状況になりますが、当面はそうする必要性を認めたくないのでしょう。

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参考
CryptoNews
U.S. Securities and Exchange Commission

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