攻撃コストは、価格と相関関係にある
ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は、堅牢性、分散性が最も高いブロックチェーンとして知られ、また時価総額でみても、上位2つを占めるブロックチェーンです。ブロックチェーンの価値は、そのネットワークのトランザクションや資産を複製することが困難であり、二重支払いが極めて難しいという点にあります。
しかし、この仕組みも、ネットワークに投下されているコンピューティングコスト(ハッシュレート)が低ければ、モナコイン(MONA)などをはじめとするコインのように攻撃が容易になってしまいます。つまり、コインの価格とそのブロックチェーンへの攻撃コストは相関関係にあり、一番価格が高いビットコインとイーサリアムは最も攻撃コストが高いブロックチェーンと言えます。
では、実際にこれらを攻撃するとして、どれくらいのコストが必要なのでしょうか。
ビットコインへの攻撃コスト
最もハッシュレートが高いブロックチェーンであるビットコインを51%攻撃する場合のコストとして、2018年11月時点での検証ではありますが、おおよそ14億ドル(約1,540億円)のコストが必要になるという研究結果が出ています。
攻撃するためには、ASICの十分な設備投資と、毎時29テラワットの電気代が必要であるとしています。この電気代は北アフリカのモロッコ1国分の消費量に相当します。
参照:CRYPTOSLATE
イーサリアムへの攻撃コスト
次にイーサリアムの攻撃コストを概観してみましょう。ここでは、現在のイーサリアムではなく、将来のイーサリアム2.0での攻撃コストを見てみます。
Ethereum2.0ではコンセンサスアルゴリズムがPoSへ移行し、カスパー(Casper)という仕様が採用される予定です。Casperでは、ネットワークの33%が悪意のあるノードであれば、直近のブロックを書き換えることができてしまいます。
例えば、ネットワーク全体で、1,000万ETHの健全なノードがあるとして、この場合の攻撃コストは、おおよそ330万ETHになり、2019年5月のドル価格で換算すると、5億ドル(約550億円)を超えるコストになります。
参照:Medium
コストとリターンの不均衡で証明される安全性
上記の大まかの目安では、ビットコインへの攻撃コストは14億ドル(約1,540億円)、イーサリアムへの攻撃コストは5億ドル(約550億円)超になりました。これらの数字はあくまで目安ですが、実際にこれだけのコストを投下して、そのチェーンが正しいチェーンとして認識されたところで、攻撃者がどれほどの利益が得られるかは考える必要があります。
イーサリアムについても、実際に33%のETHを市場で買い集める過程で市場価格が急騰し、攻撃コストはさらに高くなることが予想されます。また、こちらも同様に、攻撃者がそのコストを回収できるほどのリターンがあるのかと考えると、決して簡単ではないでしょう。
このようにブロックチェーンへ攻撃する場合には膨大なコストがかかるということは、攻撃者へのリスクとなり、それによって安全性が証明されているともいえます。
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