元共同創業者が批判する現在のfacebook
Facebookの元共同創業者クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏による現在の同社に対するの批判的論説がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されました。
同記事は長いですが、内容も重厚で読んだほうがいい記事です。同社のコーポレートガバナンスや民主主義の話などが中心で、とても考えさせられる内容になっています。なぜ、これを取り上げるかというと、しばしばブロックチェーン業界やweb3的なビジョンの文脈で批判の対象になるFacebookの「ガバナンス」や「独占」について示唆を得れるからです。
まず、同記事のいくつか要点ピックアップと意訳を紹介します。詳細については、原文を読まれることをおすすめします。
ガバナンス・独占・民主主義の問題
同社のユーザーのプライバシーの取扱についての問題は他にもさまざまな場面で取り扱われているので、ここでは取り扱いません。主にガバナンスと民主主義の2つです。
Facebookのガバナンスの問題点は、そもそも株式の保有割合にもあると指摘されています。ワッツアップ(WhatsApp)やインスタグラム(Instagram)を含む同社の主要サービスの月間アクティブユーザーの合計は、27億人になるにもかかわらず、同社の議決権付き株式の60%は共同創業者で最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグ氏が保有しており、集権的で同社の取締役は機能不全になっているのではないかということが指摘されています。
同社の買収や重要なアルゴリズムの方針に役員会は意見できず、反対されても、ザッカーバーグ氏の議決権のみで決定が可能であり、そして会社法においてはそれが正しいです。(Facebookはデュアルクラス株式を採用しており、株式の種類ごとで議決権の重みが異なる)
民主主義と政府の役割を軽視か?
これほどの規模のサービスの取締役会について指摘が行なわれることは問題です。そもそも規模以前に上場企業のガバナンスとして疑問が生じるといえるでしょう。
また、アメリカ政府が独禁法でWhatsAppとInstagramの買収を止めなかったのも、アメリカ政府の間違いであると指摘しています。現に今、Facebookグループの競合は存在せず、独占禁止法とはどういう経緯でできて、なんのためにあったのかという問いかけがなされています。
そのうえWhatsAppとInstagramの創業者はどちらもFacebookグループを去っており、WhatsApp創業者に至っては、はっきりとFacebookを批判しており、かつ売却したことを後悔していると公言しています。そう思うと買収を幾度と断り、まだ競争姿勢を貫いているSnapchatは凄いもといえます。
基本的には、民主主義と政府の役割を軽視しすぎたかもしれないという論調で、政府は同社のコーポレートガバナンスや運営に介入をすべきなのか?するとしたらどの程度の介入が必要なのか?という問いかけが記事にはあります。またこの問題は次期大統領選挙でも、複数の候補者が議題にあげられているトピックです。
ブロックチェーンは何を解決できるのか?
ブロックチェーンの世界には、それぞれの立場に差があれど、以下のような議論が度々あります。
- インターネットでの個人のプライバシー問題に対するアプローチ
- プログラマブルなガバナンスシステム
などです。
個人的には、いわゆるプログラマブルなガバナンスシステムやweb3的なビジョンを持つ世界観を標榜しながらも、立法と民主主義による自浄作用を期待しています。現在の未成熟なブロックチェーンの技術にとっては、今まさに勃興しているFacebookのような現実的問題は、大きすぎる課題です。
同時に、立法と民主主義の仕組みと並走するプログラマブルな新しい何かが長い時間軸とともに少しずつ形になればいいと思ってます。それは民主主義とは言えるものではないかもしれませんが、インターネット上の全く新しいガバナンスシステムで、恐らくブロックチェーンの世界から出てくるはずです。
これは2、3年で形になるものではなく、もう少し長い時間が必要ではないかと筆者は予想していますが、業界の人にとってこのトピックは関心を持つべきトピックでしょう。原文を読まれることも是非おすすめしたいです。
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