Facebookの仮想通貨リブラ(Libra)、グローバル企業vs国家の観点で考察する

Facebookがイニシアチブをとるステーブルコインの「リブラ(Libra)」が大きく話題になりました。

同プロジェクトに対する概要自体はさまざまなメディアから出ていますので、本コラムでは取り扱いません。なにより原典であるホワイトペーパーも日本語が公開されていますので、それを参照することが一番良いでしょう。

本コラムでは、当該プロジェクトに対する筆者の私見を記していきます。前回のコラムではフォーブスの記者の予想も紹介しました。

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国家を超えるグローバル企業の象徴

まずLibraは、複数のグローバル企業の集まりによるブロックチェーンですが、5年後のマネタリーベースが国家級になると、いよいよ企業は国家を超えてくるだろうと推測できます。

GAFAに代表される企業の影響力は非常に大きいことは言うまでもなく、またGoogleとApple、Facebook、Amazon、Microsoftの5社を合わせたキャッシュフローは、すでに日本国のキャッシュフローを上回っています。

Facebookは20億人以上のアクティブユーザーを抱えそのユーザー数はいずれの国の人口よりも多いです。また、Amazonは、プライム会員が1億人を超えており、1億人から毎年予測可能なキャッシュフローがはいり、国家の徴税より前向きな課金であり、その規模はほとんどの国家より大きいです。

すでにこれらの企業の力が、国家に近づいていることを示していますが、Libraはこういったグローバル企業を本当の意味で超えていく可能性があります。

経済力が強くない国ではこれはより顕著でしょう。Libraによって5年後、途上国の法定通貨が現地で使われることが減ると予想できます。これは新しいお金が生まれると避けられない未来です。Libraとアフリカの小国の通貨ならLibraのほうを皆受け取りたいと思うのはイメージしやすいでしょう。そのような状況になると、その小国は金融政策ができなくなりこの問題は深刻になるかもしれません。

リブラ(Libra)の今後の予想

数年後にLibraが、アダプションしたあとに担保資産を債券や法定通貨からFacebookやコンソーシアム企業の株式に移行していくことができるようになることは想像に硬くありません。

Libraは裏付けでもある担保資産を「Low Risk Assets」に投資をするとしていますが、Low Risk Assetsとはいかようにも使える曖昧な定義です。

もしかすると3年後には、「Facebook株式もLow Risk Assetsです」という論理で、担保資産から法定通貨の割合が減り、Facebook株が混ざっているかもしれません。その場合、いよいよこれはグローバル企業が国家の通貨発行権に挑戦するようなシナリオになる可能性があります。

アメリカの銀行産業の壁があったからこそ誕生したリブラ(Libra)

ところでLibraの誕生の背景を考えてみましょう。GAFAを含む米国IT各社は、金融業の代表である銀行を運営をしたいにもかかわらず参入できずにいます。GAFAの中で最も金融業を行っているのはAmazonですが、これもAmazonギフト券やクレジットカード、出展企業向けの融資にとどまっており銀行業は行っていません。

日本では比較的簡単に事業会社が銀行を運営したり買収する例がありますが、アメリカでは事業会社が銀行を運営することはできず、その規制はグループ会社まで及びます。Libraはそういう銀行産業の壁という規制があってこそ、生み出されようとしてるイノベーションでもあります。

もしアメリカで事業会社が普通に銀行業を行えていれば、Facebookやこのコンソーシアムに参加している企業はそれぞれ銀行を行っていて、恐らくこのLibraの構想がスタートしなかったのではないかと思います。

そういった意味では、国ごとにさまざまな規制などがありますが、それをてこに画期的なものが生まれる例は探せばいくつもあり、Libraもその一つだといえるでしょう。

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