
暗号資産(仮想通貨)メディアのコインスピーカー(Coinspeaker)は、インターネット上でリークされた文書を引用して、インドが近く中央銀行発行のデジタル・ルピー(Digital Rupee)を除き、仮想通貨の一切の利用を禁止する法律を施行する計画を進めていると伝えています。
中国に次いで人口が第2位のインドは一貫して、仮想通貨に好意的な国ではないことで知られてきましたが、オンライン上にアップロードされたこの文書が事実なら、仮想通貨市場に大きなインパクトを与える可能性があります。
仮想通貨を規制する18ページの法案
ブロックチェーン技術に通じたインドの弁護士ヴァルン・セティ(Varun Sethi)氏は2019年7月15日、インターネット上に「暗号通貨の規制と公的デジタル通貨の規制法案2019」と題する文書をアップロードしました。それによると文書は、18ページに及ぶ長文であり、同国で通用している仮想通貨の利用を禁止する計画といくつかの定義が含まれています。
文書の真偽は未確認ですが、すでに多くの人々の関心を集めています。インドの仮想通貨取引所WazirXの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるニッサル・シェティ(Nischal Shetty)氏はTwitterに、文書が本物と証明されても、インド議会モンスーン会期で討議されることはないし、法案が可決されまでには長時間かかると投稿しています。
問題の法案の仮想通貨禁止について、デジタル・ルピーは「暗号通貨」の定義の中には分類されず、禁止される仮想通貨は「いかなる人もインド国内で、仮想通貨を採掘や生成、保持、販売、取引、発行、移転、処分もしくは利用してはならない」と規定されます。
インドの日刊英字紙「The Economic Times」によると、法案は関係する省庁に回覧されていると、事情の詳しい政府関係者の話を伝えています。
デジタル・ルピーはインド準備銀行(RBI)が発行
デジタル・ルピーは、インド政府の承認を得てインド準備銀行(RBI)から発行され、RBIが規定する規制を受けることになります。
法律の下で、取引の媒体あるいは価値の保存として仮想通貨が禁止されても、ブロックチェーン技術そのものである分散型台帳技術(DLT)の研究・利用はこれまで通り許可されます。DLTはまた、金融機関やほかのサービスプロバイダーがネットワークあるいはサービス向上のために利用することが例外として認められます。法律に違反した人は、所定の罰金もしくは10年の刑に処せられると規定されています。
6月のある報道によると、RBIはその研究開発部門で中銀発行のデジタル通貨(CBDC)を開発するため、独自のブロックチェーンプラットフォームの開発を進めていると伝えられましたが、この計画はその後見送られたとも報じられています。今回の法案との関連性は不明です。
ビットコイン(BTC)禁止に強い批判も
インドはG20大阪サミットで、金融活動作業部会(FATF)の報告書を支持した国として、仮想通貨の規制について他国と共に実行する立場になります。ニッサル・シェティ氏は「FATF基準によって、仮想通貨はインドで合法的ステータスを得たことを意味する。末端顧客にとってその最大の利点は、仮想通貨産業が改めてバンキングサービスを提供できるようになることだ」と述べています。
ベンチャーキャピタル投資家で米ドレーパー・アソシエーツ(Draper Associates)の創設者であるティム・ドレーパー(Tim Draper)氏はTwitter上に、「何と愚かな行為だ!インド政府は切実なニーズのある国に繁栄をもたらす通貨であるビットコインを禁止するって。インドの指導者は恥を知れ」と激しい口調で批判しています。
参考
・Leaked Document Shows India Will Ban All Cryptocurrency except Its Digital Rupee
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