- 仮想通貨に賛否両論、上院公聴会
- 31日、米上院銀行委員会は仮想通貨規制に関する公聴会を開催した。公聴会では、仮想通貨・ブロックチェーンの領域で世界をリードする意思や、仮想通貨に対する不信感など、議員らが示した見解の他、有識者も複数の見方と懸念を伝えた。
仮想通貨に賛否両論、上院公聴会
31日、米上院銀行委員会は業界の有識者らを招き、仮想通貨規制に関する公聴会を開催した。公聴会では、仮想通貨・ブロックチェーンの領域で世界をリードする意思や、リブラ・仮想通貨に対する不信感など、議員らが示した見解の他、有識者も複数の見方を委員会に対して伝えた。
本記事では今回の公聴会における最も重要な内容をまとめた。
仮想通貨領域でリードしたい議員
公聴会では、仮想通貨支持派のMichael Crapo議員やVan Hollen議員は、仮想通貨とブロックチェーン技術が必然的であり、国の経済などに多くの利益をもたらすものだと見ていることがわかった。
Crapo議員は米国がこの領域においても、世界のリーダーとの立ち位置を確立する必要性があるとして、以下のようにコメントした。
この新興技術はもちろん莫大なポテンシャルとリスクを持っているが、米国はこの領域の先端に立つべきだ。
また、Catherine Marie Cortez Masto議員もブロックチェーンの持つポテンシャルを見込んでおり、ブロックチェーン大国=中国を抜けて、グローバルの立ち位置を確立する重要性を強調した。
これらの見解は、昨日コインポストで紹介したリップル社のMonica Long氏が表明したコメントにも類似点が見られる。
Long氏は、米国の仮想通貨規制が整備されることで、イノベーション大国として米国がこの業界のグローバルリーダーの立ち位置を確立できると見ている。
関連記事:Monica Long氏の主張
2008年に類似、金融包摂を疑問視も
先日のリブラ公聴会にて、プライバシー問題や企業の独占主義を巡り、フェイスブック社と仮想通貨に対する強烈な不信感を示してきたSherrod Brown議員は、本日の公聴会でも仮想通貨がもたらし得る経済リスクに対する懸念を明示した。
Brown議員は、無責任な金融機関が2008年の金融危機を引き起こしたように、現在のテック企業の野望はそれを繰り返しかねないと指摘し、「当時ほとんど規制されていないサブプライムローンを、イノベーションの名目で経験の浅い投資家に売っていたように、仮想通貨市場を警戒せざるを得ない。」と見解を述べた。
そして、仮想通貨業界が掲げている「金融包摂」を疑問視するBrian Schatz議員は、証人として参加した米仮想通貨企業CircleのCEOにこのように話した。
確かにブロックチェーンの利用範囲が広いかもしれないが、これ単一では銀行口座を持たない「アンバンク」が直面する金融問題を解決できるとは思わない。
この技術のポテンシャルを疑うつもりはない。しかしそれと同時に、仮想通貨が低所得者コミュニティの「バンク」の役割を果たせるとも思わない。
ここにいる議員たちは、その「金融包摂」のスローガンが実現し得ると到底納得に行かない。
この質問・懸念に対して、CircleのCEOを務めるJeremy Allaire氏は、金融包摂が非常に複雑な問題であることを改めて認め、「金融包摂は、人間社会の問題・政策問題でもあり、我々業界が解決しようとしているリスクでもある。」と、現在の課題を指摘し、「しかし、仮想通貨技術は実際、これらの問題に対する解決策を提供している。もちろん特効薬ではないが。」と答えた。
ここで、Schatz議員は再び、ブロックチェーンの有用性を疑うのではなく、「それを利用するまでの必要な法的プロセスが確立していない」ことが最大な問題であると主張した。
Alaire氏は昨日、公聴会に向けた冒頭証言で、「20世紀の金融資産を対象に設計された既存の規制では、21世紀の革新技術に支えられた仮想通貨を適切に管理することはできない」と指摘し、国会による包括的なアプローチを求めていた。
Brown議員や、Schatz議員が懸念する点を踏まえた上、むしろ国会による「原則ベースの枠組み」を制定し、業界の成長と発展に空間を与える必要があるのではないかと、有識者らは業界と国会にある溝を指摘している。
「技術問題でなく、政策問題だ」
証人として参加した米著名大学UCIの法学教授Mehrsa Baradaran氏は、上述のSchatz議員の金融包摂問題に応じて、米国の4分の1の人口が国の金融システムにアクセスできなく、高い手数料を払ってその他のサービスプロバイダーを利用していることは、「技術で解決できる問題ではなく、国の政策問題だ」と指摘した。
このアンバンクの問題を解決するには、個人がアクセスする手段が必要ではあるが、ブロックチェーンより簡単な方法があると、Baradaran氏は述べた。
低所得者や銀行口座を持たない人は、銀行に対して不満を抱えているのでなく、そもそもそれらの地域に銀行がないことが根本的な問題だ。
銀行がそれらの地域でサービスを提供しないため、もちろんデビットカードなどを利用できる場所もない。
米国では、地域やコミュニティにおける差別などの問題があり、州や市の政策によっては金融機関が銀行業務を行わない現実が見られる。
Baradaran氏は昨日提出した冒頭証言でも、「仮想通貨が金融包摂と銀行の公平性問題を解決できるとは思わない」見解をあらかじめ示し、技術でなく、政策による解決であるべきだと話した。
なお、このような問題を解決する目的を持つ連邦準備制度(連銀)がすでに存在しており、「連銀の設立許可によると、公益のためにサービスを提供するのは連銀のミッションだ」と取り上げながら、ビットコインのような仮想通貨がその役割を担うべきではないと、その必要性を否定した。
この見解を受けたeToroのシニアアナリストMati Greenspan氏は連銀が権力を維持しているのは、公益のためではなく、インセンティブによる政策の制定だと指摘し、「政策の変更を求めたいのなら、仮想通貨の存在を通して、連銀に競争させるしか現在の金融システムを変える方法はない」と強調した。
公聴会まとめ
様々な情報・意見を収集するために開かれた今回の公聴会は、前回のリブラ公聴会とは異なり、フェイスブック社に対する批判や詰問などが議題ではなかった。
仮想通貨に対して賛否両論の議員らが、Allaire氏が再三に強調するデジタル通貨を分類するなど明確な規制フレームワークの必要性や、Baradaran氏が唱える政策レベルでの解決策をどのように受け入れるか、どのように法案に反映させるかはわからないが、意見をかわし議論を重ねたこのこの公聴会は以前よりも有益だったとは言えるだろう。
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— CoinPost -仮想通貨情報サイト- (@coin_post) 2019年7月18日
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