中国人民銀行が年末までに人民元に代わるデジタル通貨の発行計画を進める

中国人民銀行(PBOC)が2019年末までには、国家支援の仮想通貨を発行する計画を進めています。中国国営新華社通信の経済新聞「上海証券ニュース」が最近、PBOC決済部門副部長ムー・チャンチュン(Mu Changchun)氏が非公開の行内計画会議で明らかにしたと伝えています。

中国は過去5年余り、人民元(RMB)の代わる法定デジタル通貨(仮想通貨)を発行する開発計画を進めてきました。

中国が年末までに人民元のデジタル通貨を発行する計画進める

中国が法定デジタル通貨を開発していることは秘密でも何でもありません。これまでPBOCをはじめ関係者らから何度かそのような発言があり、さらに諸外国の関心も高まっていました。

カナダのブロックチェーン技術研究所であるブロックチェーン総合研究所(Blockchain Research Institute=BRI)のドナルド・タプスコット(Donald Tapscott)会長は2019年4月、ブルームバーグ(Bloomberg)の質問に答えて、「中国では20年もすれば、ビットコイン(BTC)を使えなくなる。中国国民は人民元を使い、唯一人民元だけが仮想通貨そのものになるよう、中国人民銀行が人民元をデジタル通貨に変えることになる」と語りました。

この計画は20年先の話ではありません。目前に迫っている問題になろうとしています。

中国は二項対立でブロックチェーンと仮想通貨を対比

タプスコット会長は最近、東南アジアを訪問した際、習近平主席が「ブロックチェーン技術は中国の将来にとって、最も重要な2つのテクノロジーの1つである」と信じていることを知りました。同会長はその時、習近平主席はわれわれをバカにしているのではないかと感じたそうです。ビットコイン取引所はどうして禁止されたのでしょうか?同会長は「何かの間違いでは?」と語ります。

ブロックチェーン研究者は、それは中国に存在する「二項対立(二元論)」の考え方だと説明します。それは1つの概念を互いに矛盾・対立する2つの概念として考える思考法のことです。それに基づいて中国政府は、一方では仮想通貨に厳しく対処し、他方ではブロックチェーン技術を認めるとするやり方です。タプスコット会長は「中国政府は暗号通貨を厳しく扱うことに本気で取り組んでいる」と指摘しています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)発行は世界に大きなインパクト

英国の中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England)のエコノミストであるアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)氏は、経済停滞に対処するためマイナス金利を導入するのではなく、別の解決策としてデジタル通貨の発行を提案しています。同氏は「仮想通貨はまだ世界的な景気後退を経験していないが、それはすでに時間の問題となっている」と警告します。

中国はどうでしょうか?習近平主席は1年前から「人工知能、モバイル通信、モノのインターネット、ブロックチェーンなど新世代のテクノロジーは、画期的なアプリケーションを加速させている」と述べ、積極的な推進を国家政策としています。

フィナンシャル・タイムズ紙のドン・ウェインランド(Don Weinland )氏は、現時点で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を真剣に考量している中央銀行はないと考え、むしろ政府や国際決済銀行(BIS)などからの強い抵抗が目立つと指摘していました。

にもかかわらず中国が、独自の法定デジタル通貨発行に向けてあえて行動するならば、世界に与える影響は極めて大きいと言わざるを得ません。

参考
CHINA TO ONE DAY TURN THE RENMINBI INTO A CRYPTO, CLAIMS BLOCKCHAIN AUTHOR

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