中東大手の航空会社エティハド航空が提携を発表した「Winding Tree」とは?

分散技術を利用した旅行マーケットプレイス

ワインディングツリーファンデーション(Winding tree Foundation)とは、スイスで設立された非営利団体で、その目的は旅行業界の発展を目標に、ソフトウェアプロジェクトおよびインフラストラクチャを開発することである。今回、アラブ首長国連邦の航空会社であるエティハド航空が提携を発表した。

Winding Treeのサービスは消費者が直接利用するサービスではなく、B2Bの旅行マーケットプレイスである。航空会社やホテルといった旅行リソースの提供者と、旅行代理店をはじめWinding Treeのデータや機能を利用したい革新的なスタートアップを橋渡しすることで旅行業界の現状を打破しようとしている。

センタリング

コスト削減によるメリット

本来であれば外部の管理会社に委託するフライト時刻の管理、荷物の追跡などの業務を低コストのブロックチェーンプラットフォームで一元管理することで、ユーザーはリーズナブルに、サプライヤーは、より収益性を上げる事が可能になる。

また、航空機などの座席を予約するためのコンピュータシステムであるグローバル・ディストリビューション・システム(GDS)に比べ、流通コストとトランザクションコストを削減することに成功している。更に、オープンソースでプラットフォームを解放していることから、機能面の拡張も柔軟な対応が可能だ。

エティハド航空グループ最高商務責任者であるロビン・カマーク(Robin Kamark)氏は、「エティハド航空は、顧客の選択肢を増やすために革新的なパートナーシップを模索しています。Winding Treeプラットフォームを活用することで、提供できる製品の拡大に加え、顧客へのリーチに大きな機会を見出しています。」と述べている。

旅行業界の分散化が重要な理由

現在、旅行業界はほんの一握りの大企業によってインフラを支配されており、それらの企業は多額の料金を請求するだけでなく、業界の門番として、市場を独占している傾向にある。そのために公正な取引がされにくくなり、旅行者の選択肢の減少に繋がっている。

Winding Treeのホワイトペーパーによると、アメリカにおいてはオンライン旅行代理店市場は、プライスライン(Priceline)とエクスペディア(Expedia)の2社で95%が占める寡占状態にあるという。

Winding Treeの最高執行責任者(COO)ペドロ・アンダーソン(Pedro Anderson)氏も、同様の意見を述べており、「物流の世界にディスラプションを起こそうとした企業はほとんどありません。なぜなら、非常に大きな利益を抱えた少数の大手企業が排他的な状態を保つようにしてきたからです。」と語った。

事業分散化のメリット以外にも、物流プロセスの効率改善がある。航空業界における荷物の紛失は非常に多く、紛失した荷物のために航空会社は年間で数十億ドル(約数千億円)の費用を費やしていることから、コスト面でもかなり逼迫した状態である。

これだけでなく、紛失は旅行者の信用を失い、顧客全体の満足度にも影響を及ぼしかねない。物流プロセスの効率を高め、荷物を正確に追跡することができるブロックチェーンの技術は両者の問題を改善し、質の高いサービス提供に繋がるだろう。

これからの課題とは

Winding Tree(ワインディグツリー)はホワイトペーパーで2017年第4四半期から2019年第4四半期までの2年間のロードマップを公開している。2018年はホテルと航空会社向けの機能、客室や航空券に関するデータ交換書式やこれらを扱う機能の開発に注力し、2019年にはツアー、レンタカーといったその他の分野に着手するとともに、スケーラビリティーやプライバシーを改善するようである。

最近では、仮想通貨決済対応の旅行代理店や航空会社の利用例も増えてきており、旅行者がよりシームレスに観光を楽しめるインフラが整いつつあるようにも見える。しかし、トークンの法的規制など問題点も多く、今後どのように障壁を乗り越えていくのか、動向に注目したい。

参考
Winding Tree
Emirates’ Etihad partners with Swiss blockchain platform Winding Tree

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