
高騰するステーブルコインのレンディング金利
ステーブルコインのレンディングや、DeFi(分散型金融)におけるレンディングの金利は高止まりしています。執筆時点でUSDCの貸し出しは平均して5%程度、DAIの貸し出しは10%前後です。
低金利の時代にこれほどの金利がつくステーブルコインのレンディングはなぜ金利が高いのでしょうか。この疑問をイーサリアム(Ethereum)創業者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏もダイ(DAI)の金利高騰の理由についてTwitterで疑問を投げかけています。
Lending DAI to Compound offers 11.5% annual interest. US 10 year treasuries offer 1.5%. Why the discrepancy?
— Vitalik Non-giver of Ether (@VitalikButerin) August 23, 2019
多くの回答は、DAIの裏付け資産へのリスクを勘案して金利が高くなっていると回答しています。また、コメント欄にはその他の意見も多く書き込まれています。
レンディングにおけるリスクの整理
実際に金利のフェアバリューやリスクの正確な計算は不可能ですが、ステーブルコインのレンディングに関するリスクはおおよそ以下のように整理できるでしょう。
ステーブルコインのスマートコントラクトのバグ
これはDAIはもちろん、USDCやTrueUSDなどあらゆるステーブルコインに存在するリスクです。いずれもスマートコントラクトを活用しており、未知の脆弱性の存在の可能性はあります。
裏付け暗号通貨資産の大幅な下落
DAIをはじめとした暗号通貨担保型では、担保資産が急激な下落が発生した場合、ロスカットが連続してステーブルコインの価格が維持できないシナリオが発生しえます。
ステーブルコイン発行会社の破産
USDCやTrueUSDの集権型ステーブルコインの発行企業は、資産を分別管理し、第三者機関から監査を受けているものの、破綻するような可能性はゼロではありません。カウンターパーティーリスクは存在します。
レンディング企業の横領や運用の失敗
ステーブルコインを貸し出すレンディングプラットフォームにもカウンターパーティーリスクがあります。そのプラットフォーム企業自体が破綻するリスクや、貸し出ししたステーブルコインや暗号通貨が異なる第三者に貸し出しされた際に、その第三者が破綻するケースです。
レンディングプロトコルで発生するスマートコントラクトの脆弱性
コンパウンド(Compound)やdYdXをはじめとしたスマートコントラクトのレンディングのプロトコルは、上述したようなカウンターパーティーリスクは存在しないですが、スマートコントラクトの脆弱性によって攻撃を受けるリスクは存在します。
また最近では、多くのプロトコルが流動性共有の仕組みを導入して、コントラクト同士がコミュニケーションをしているため、あるプロトコルのリスクが異なるプロトコルのリスクにもなりえます。
どのステーブルコインを、どのプラットフォームで利用するかにより、自身の負うリスクは増減しますが、基本的には上述した5つの要因のうちのいくつかの掛け算でしょう。重要なことは、高金利はノーリスクではなく、リスクがあるから高金利であるということです。精査をしてそれらを利用することをおすすめします。
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