暗号通貨投資家が認識しておくべき量子コンピュータがビットコインの脅威になるか否か

Googleが量子コンピューターによる「量子超越性」を実証

Googleが10月23日、量子コンピューターによる「量子超越性」を実証したことを、最新の論文で正式に明らかにしました。それに伴い同日、ビットコイン(BTC)の価格が10%程度下落をしました。量子コンピュータによって暗号解読が容易になり、ビットコインのシステムが成り立たなくなることを懸念したことがビットコインの売りにつながったと想定できます。

具体的に、ビットコインの公開鍵暗号から紐づく秘密鍵を割り出せたり、マイニングでナンスを容易に計算することができてしまうことなどが連想されました。しかし、これらの連想や「量子コンピュータがビットコインを破壊する」というような主張は正当性のあるものではありません。

暗号通貨投資家が認識しておくべきこと

量子コンピュータは理論が提案されてから現在まで四半世紀が経過しています。量子コンピュータは、量子理学を元としていますが、量子力学が直感と反する様は、物理学者のリチャード・ファインマン(Richard Feynman)も「もしも量子力学を理解できたと思っているならば、それは量子力学を理解できていない証拠だ」と表現したほどです。

通常のコンピュータは0と1の羅列によってプログラムを実行しますが、量子コンピュータにおいては0と1の組み合わせによって計算を実行し、これまでのコンピュタと桁違いの計算速度が期待されます。

量子コンピュータの技術はいくつか存在し、混同されがちですが大別して次の3つに整理されます。

  • 万能量子コンピュータ:我々が普段使っているコンピュータと同等以上の計算能力を得ることを目的とした計算機
  • 量子アニーリング:特定の問題に特化した計算機で、公開鍵暗号の脅威にはならない
  • 量子鍵配送:あるデータを交換するときに、そのデータが中間で傍受されたことを検証できる技術

結論から述べるなら、暗号通貨の脅威になり得るのは、万能量子コンピュータのみであり、それは実用化するまでまだ道のりは長いものです。これはGoogleが発表した論文でも指摘されており、現在広く使われているコンピュータでの計算に使うための効率的な方法は存在しないとも述べられています。

これを「複雑な計算」を短時間で解いたと報道するのはミスリーディングであり、ビットコインの脅威になり得ると判断することはあまりに短絡的です。

万能量子コンピュータが実現すれれば脅威は生活インフラ全体に

万能量子コンピュータの誕生までの道のりは長いですが、実際にそれが実現し公開鍵暗号も簡単に破れるようなったとしましょう。私達が暗号通貨以外に日常で使用しているバンキングシステムはhttps通信も暗号技術を多分に使用しています。

暗号通貨が成り立たなくなることばかりか、私達の生活インフラが成り立たなくなります。
そういった点で暗号通貨の脆弱性になりえると過剰に指摘することがそもそも筋違いであると言えます。

万能量子コンピュータが40年後や50年後に実現することを見越して量子コンピュータ耐性のある暗号を研究開発をすることは重要ではありますが、量子コンピュータがすぐに脅威になることはまずありえないでしょう。

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