イーサリアム(Ethereum)の状況は1960年代のIBMのようであるという論考

スマートコントラクトプラットフォームの競争環境と1960年代のコンピュータ市場の状況

現在のイーサリアム(Ethereum)の状況は1960年代におけるコンピュータメーカー市場のおけるIBMのようであるという論考を米クリプトファンドのプレースホルダー(Placeholder)が公開しました。

著者はジョエル・モネグロ(Joel Monegro)氏で、ブロックチェーン領域においては常にアプリケーションよりプロトコルの価値が高めるというファットプロトコル(Fat Protocol)の理論を展開し注目された人物による記事です。

イーサリアムが1960年代のIBMというのは、スマートコントラクトプラットフォームの競争を示しています。1960年代のコンピュータメーカー市場においてIBMが最も主要な存在で、そのあとに バロース(Burroughs)、コントロール・データ(Control Data)、デジタル ・エクイップメント(Digital Equipment)などが存在していましたが、IBM以外は目立った存在ではありませんでした。

現在のスマートコントラクトプラットフォームはこの状況に近くて、最も主要なイーサリアムの他にもさまざまなものがありますが、いずれも決定的なものはありません。テゾス’Tezos)やイオス(EOS)、トロン(TRON)、アイオーエスティー(IOST)などの新興ブロックチェーンが無意味なものではありませんし、一定の用途もありますが、現時点においてイーサリアムの存在感とは遠い位置にいます。

モネグロ氏はイーサリアム以外のスマートコントラクトプラットフォームが無駄なものであるということではないと注釈しており、それらは一定の需要があることを指摘しています。しかし、現時点でイーサリアムよりメインストリームになる兆しはありません。これがイーサリアムが1960年代のコンピュータメーカーとしてのIBMのようであるという理由です。

しかしながら、イーサリアム以上の存在が生まれそうにないことは「今の所」ということも重要です。1960年代のコンピュータメーカー市場におけるIBMは主要な存在でしたが、その後、コンパック(Compaq)がIBMの完全互換機を作成、デル(Dell)が1980年代に創業して在庫を持たない注文生産のメーカーとして躍進してから、コンピュータメーカーにおけるIBMの存在感は変化しています。そして、2005年にはIBMはパソコン事業をレノボに売却するに至っています。

スマートコントラクトプラットフォーム競争の変化のきっかけは?

1960年代におけるIBMの状況が変化したように、スマートコントラクトプラットフォームの状況も今はイーサリアムが最も主要ですが、状況は数年で変わる可能性もあります。

直近でこの競争環境に変化が訪れるとすれば、そのきっかけになるトピックは、恐らく、WASM互換のブロックチェーンが増えること・独自ブロックチェーンのフレームワークによる開発のコストが下がることなどが挙げられるかと思います。 
現在、イーサリアムが主要なスマートコントラクトプラットフォーム足り得る理由は、スマートコントラクトプラットフォームとしてファーストムーバーであったからこそさまざまな開発者ツールやライブラリが充実していることにあります。

しかしWASM互換のブロックチェーンが多く生まれ、その環境でブロックチェーン関連のアプリケーション開発をすることが主流になった場合、EVMでの開発をしていた既存のイーサリアムの資産による優位性が薄れる可能性はあるでしょう。しかし、これはあくまで可能性の話であり、やはり現時点においてイーサリアムが最も主要な存在であることが間違いありません。

イーサリアム(ETH)の価格・相場・チャート

参考
Ethereum And The Seven Dwarfs

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