ブロックチェーンにおけるハードフォークの問題点とその必要性とは?

2018年11月に、ビットコインキャッシュ(BCH)が、ビットコインキャッシュABC(以下:ABC)とビットコインサトシズビジョン(SV)の2つのブロックチェーンにハードフォークをしたことは周知の通りです。

本コラムでは、ハードフォークによるブロックチェーンの分裂が及ぼす悪影響として、3つの点に整理をします。そして、悪影響がありながらも、フォークという選択肢がコミュニティに残されていることの必要性にも触れていきます。

ハードフォークはどうして起こるのか?

ハードフォークが起こり、2つのブロックチェーン、2つの暗号資産に分離されるという事態は、互換性のない2つのフルノードクライアントが誕生し、それぞれのクライアントを支持するグループが存在することで起こり得ます。

ブロックチェーンはピアツーピア(P2P)のネットワークであり、互換性のあるノードクライアントが通信しあうことでブロックチェーンが成り立っています。

ここで互換性のないノードクライアントにアップデートしてしまえば、そのブロックチェーンは分岐の道を歩むことになります。

過去には、ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ、同じく、ビットコインからビットコインゴールド、ビットコインダイヤモンドなどのハードフォークが起こりました。

2つに別れたブロックチェーンは、これまでのブロックの履歴を引き継ぎ、リプレイプロテクションを施せば、以後、独立したチェーンとしてそれぞれ動き続けます。

こういったハードフォークによる2つのブロックチェーンの分岐は、主には開発コミュニティの方針が合わない場合に起こり得ます。

また、稀にある勘違いですが、コードを大規模にアップデートをする場合も、ハードフォークの形式を取る場合がありますが、これはブロックチェーンの分岐とは異なります。

実際には、確かに2つのチェーンに分岐をするのですが、コミュニティ内で、「ハードフォークによるアップデートを行い、古いチェーンは捨てよう」という合意が取れている場合には、2つのコインに分岐をするようなことは起こりません。

ハードフォークによる悪影響とは?

一般的には、ハードフォークは基本的には起こるべきものではなく、コインが2つに分離されるようなことは問題点が多くあります。ハードフォークによるブロックチェーンの分裂が及ぼす悪影響について次の3点が考えられます。

問題点(1):ブランド価値の低下

まず、ブロックチェーンのブランド価値の低下があります。ビットコインキャッシュが、ABCとSVに分類をした際にも、このブランド価値の低下は間違いなく起こっているでしょう。
多くの取引所やサードパーティーのウォレットが、どちらのコインをビットコインキャッシュと呼ぶかを議論して、結果的に、ABCをビットコインキャッシュのティッカーに採用しました。

ですが、ティッカーを引き継いでもブランドの信用力は、フォーク前から落ちていますし、ティッカーを受け継げなかったコインについては言うまでもないでしょう。

問題点(2):セキュリティの低下

次にセキュリティの低下です。2つのコインが分離をしたとき、多くの場合、それらのネットワークを支えていたハッシュパワー(セキュリティ)も、それぞれのマイナーがサポートをするチェーンに移行します。

これはオリジナルチェーンと新しく生まれたチェーンのいずれもが、フォーク前よりセキュリティを低下させることになります。

問題点(3):開発者の有限性

開発者は有限であることも問題点として考えられます。ブロックチェーンが分離をしたところで、それぞれのブロックチェーンは、コミットをしてくれる開発者を集めなくてはなりません。

開発者は有限であり、特にコンセンサスアルゴリズに関わるコードを書ける開発者や、ノードクライアントの実装に関わることがきでる開発者は非常に希少です。

そして、そうやって出来上がったブロックチェーンを使って、アプリケーションなどを実装する開発者もまた同時に希少です。結果的に、フォークをしたブロックチェーンは、困難な道のりを歩むことになり、それはイーサリアム(Ethereum)からフォークをしたイーサリアムクラシック(Ethereum Classic)などを見ての通りです。

ハードフォークという選択肢の必要性

こういった悪影響がありながらも、ハードフォークによるブロックチェーンの分離という手法がコミュニティに残されていることは重要であるという側面もあります。

というのも、開発方針が異なるグループが賛同できないことが続く場合、永遠に合意ができないことが続いたり、また、チェーンを分離する選択肢がなければ独裁的な金権政治になりかねません。

いつでもチェーンの分離を出来ることは悪影響を多くはらみつつも、選択の自由という側面があります。
しかし、ハードフォークをして分離を選択した開発グループは、その選択の自由を選んでも、なかなか苦しい道のりになることがほとんどの場合であることは上述したとおりです。

こういった前提を元にオンチェーンガバナンスの議論や、Decradのようなフォークを防ぐ実装などさまざまな議論がされています。本コラムが、ハードフォークの議論の前提土台になり、今後の議論や問題点の認識のきっかけになれば幸いです。

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