仮想通貨市場の急落、2つの売り圧力を警戒か

仮想通貨市場は17日、日本時間明朝3時にビットコイン(BTC)が約8分間で4%急落、心理的節目にあった7000ドルを割った。直近数日間に渡って7000ドル付近で均衡する動きが見られていたが、下落方向にブレイクした。

下降トレンドが続く中での市場急落、市場変動直前に報告されたChainalysisの最新報告書の内容で明らかになった「短中期の売り圧力」が警戒された可能性がある。

本記事では、今回の市場変動で下落幅がビットコインを上回ったイーサリアムに関する内容も含め、売り圧力警戒の背景を解説する。

警戒される2つの大口動向

●警戒ポイント1:PlusToken

資金洗浄追跡の専門企業Chainalysisは最新の報告書で、2018年より多額の仮想通貨をだまし取ったとされる中国系の仮想通貨詐欺事例「PlusToken」が一部資金洗浄に動いていることを報告した。

PlusTokenとは、2018年半ばに開始した「高い投資収益」を謳った中国のウォレットサービス。紹介報酬として配当が入る仕組みで、捜査報告からネズミ講の詐欺であることが発覚した。当時の試算では、80万人以上の参加者から、計20万BTCの被害で、概算29億ドルの被害金額に膨らんだとされる。

今回の報告書の内容によると、投資家から得たビットコインとイーサリアムの総額は20万BTCと640万ETHに上るが、一部で資金洗浄の動きが確認されたという。

現時点で資金洗浄を試みていることがわかったのは「4.5万BTC・80万ETH」で、別のアドレスへの移動が確認。それぞれ未だに売却されていない残留トークンがあることを報告した。

ビットコイン(BTC):2.5万BTCが現金化済み、残り2万BTCが8700を超えるアドレスに分散送金

イーサリアム(ETH):少なくとも1万ETHは現金化済み、残り79万ETHは今も動かされていない状況

これが売り圧力として警戒された格好だ。USD換算では資金洗浄で動かされたトークン総額はBTC・ETH共に1億ドルに相当するが、流動性やマーケットの大きさから特にイーサリアム市場への影響が警戒された動きに関連性も見て取れる。

Chainalysisによると、PlusTokenの首謀者らは、不正に得たBTCなどを中国HuobiのOTC取引で現金化していると指摘。これまでに売却したビットコインの総額は1億8500万ドルにも上るという。

出典:Chanalysis

上記の図でも明らかなように、PlusTokenの動向と市場の上昇・下落には相関性があることが確認できる。

相関図の推移では、PlusToken閉鎖のポイントまでBTC市場が上昇しており、閉鎖のポイントと2度に渡る大口現金化後のポイント後に現物市場の価格が下落していることが確認できる。

これらの動きについては、過去に専門家が分析。売り圧は今後1.5〜2ヶ月ほど継続する可能性が高いと指摘している。(11月28日時点)

  • PlusTokenへの入金目的で仮想通貨を購入する投資家の影響で、人民元の取引所への入金が膨らみ、買い圧力として4月よりビットコインは上昇相場に転じた
  • 6月25日に関係者が逮捕された直後、BTCが下落トレンドに転じており、市場のターニングポイントになった

PlusTokenの首謀者らによる、市場売却の影響はこれまでも報道されていた通りだ。詳しくは過去のCoinPostの記事から確認できる。

仮想通貨市場を翻弄する「クジラの正体」史上最大のBTC詐欺に関連か


●警戒ポイント2:初期投資家のETH大移動

PlusTokenによる売り圧以外にも、大口投資家による連続した送金履歴が確認された。

etherscanのブロックチェーンデータによると、当該アドレスから連続して大口のイーサリアム送金が行われており、直近では12日(約4日前)に6万ETHが移動した。当該アドレスは2015年より53万ETH保有しており一度も動かされていなかったものだ。

初めて動きが確認されたのは、2019年9月。何回かに分けた大口送金で、計30万ETHが移動した。今回の送金もこれらの流れに該当するものとなる。

Svanevik氏とユーザーの指摘では、当該ETHアドレスは開発者の「James Prado」のものである可能性が浮上している。

アドレス内の資産は、イーサリアムの初期から保有するもので、ICO参加者に関連したもので、GithubのデータからもJamesの該当アドレスとの関連性が指摘された。

現時点で現金化を行なったかは明確ではないが、イーサリアム初期の頃から移動していなかったETHの新たな動きに、市場が警戒する要因と見ることができる。

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