
オントロジー(Ontology)はスマートコントラクトを実行できるパブリックブロックチェーンです。今回はOntologyの特徴的な点の一つ、標準で備わるIDのフレームワーク「ONT ID」についてまとめます。
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- ONT IDはW3Cの基準を満たす分散IDシステム
- ONT ID保有者は、トラストアンカーなどから検証済であることを暗号的に証明ができる。
- 既存のIDやKYCシステムでの確認作業に大きなコストが強いられており、それを軽減できる可能性がある他、さまざまなマイクロサービスでも実装がしやすい。
ONT IDとは
ONT IDはOntologyのブロックチェーン上の分散型IDプロトコルです。Web技術の標準化を行うW3Cによる分散方IDの基準を満たしており、暗号的に検証が可能なIDシステムを個人や企業、その他の組織が使用できます。
ONT IDは、単一の中央集権組織の管理を受けず、ユーザーが個々に管理することが可能です。ONT IDは、Facebookによるログインシステムをはじめとしたさまざまな従来のIDシステムの欠点である個人の情報の管理やデータの寡占化などの問題を解決します。既存のIDシステムと比較した際、ONT IDは以下のように課題解決をしています。
イーサリアム(Ethereum)をはじめとした他のブロックチェーンでも、このようなIDシステムを構築する動きはありますが、Ontologyではこのような仕組みが標準プロトコルとして備わっていることが特徴的です。
ONT IDはどのように動くか?
ONT IDの仕組みを見てみましょう。ONT IDを取り巻くエコシステムのプレーヤーは以下のようになり、それぞれの動きを概観します。
レシピエント
ONT IDの保有者です。ONT IDの保有者は他のユーザーからONT IDの検証(承認)を受けることができます。
クレイムイシュアー
クレイムイシュアーは、他のユーザーのONT IDを検証(承認)する役割のことを指します。また、クレイム検証者自体もONT IDの保持者です。
クレイム検証者はトラストアンカーとも呼ばれ、KYCサービスや公共機関がトラストアンカーの役割を行う場合もあります。トラストアンカーの検証を済んだら、検証済である旨をハッシュとしてブロックチェーンに記録して、被検証者であるONT ID保有者は、検証済であることをサードパーティーに証明することができます。
クレイム検証者
サードパーティーの検証者が、ONT ID保有者にトラストアンカーなどから検証を受けているかを確認できます。
開発者
開発者はこのONT IDを使用してサードパーティーのアプリケーションを構築できます。
参照:ONT ID
ONT IDの基本的なコンセプトは、自身のIDが特定の機関から検証済みであるかを、暗号的に証明できるものだと言えます。
ONT IDはビジネスにどのように役に立つか?
このようなONT IDは、さまざまな産業で利用可能です。どのようなメリットがあるか一例を挙げましょう。
例えば、現在では決済アプリをはじめとしたさまざまなフィンテックサービスが登場しています。ユーザーはこれら新しいサービスを利用するたびに、さまざまな情報を入力し、本人確認書類をアップロード、場合によっては郵送確認をするなど各サービスでKYCを行っています。
これは非常に手間です。そしてこの手間はユーザー側だけでなく、サービス事業者側も同様で、確認作業に多大なコストを支払っています。これら全てのKYC業務は、複数のサービス全てが同じような作業であるにも関わらず別々に行っており、社会的コストであるとも言えます。
前述したONT IDを活用すれば、ユーザーがある銀行をトラストアンカーとして検証を済ませていたとして、それを証明すれば当該ONT ID保有者は銀行でKYC済であることを暗号的に証明することができます。
既存のIDやKYCシステムでの確認作業に大きなコストが強いられており、それを軽減できる可能性がある他、さまざまなマイクロサービスでも実装がしやすいことがONT IDのメリットであり、ブロックチェーン上のIDシステムの優れた点であると言えます。
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