第三者への信頼を最低限にする形でBTCをイーサリアムにブリッジするtBTCの仕組みとは

第三者への信頼を不要としたブロックチェーンのブリッジは困難

異なるブロックチェーン同士の接続を第三者の信頼なしに行うことはとても困難です。ビットコイン(BTC)をイーサリアム(Ethereum)上で表現するWBTCは、イーサリアムへのブリッジとして現在最も主要なものですが、ビットゴー(BitGo)がカストディを提供しており、第三者への信頼を前提としています。

コスモス(COSMOS)やポルカドット(Polkadot)といったプロジェクトもビットコインやイーサリアムのインターオペラビリティを実現できると喧伝されているものの、実際にはトラストレスなブリッジとは異なります。

こういった現状に対するブレークスルーとして、第三者への信用を限定した形でビットコインをイーサリアムのブロックチェーンにブリッジさせるプロジェクトとしてtBTCが提案されています。

ビットコイン(BTC)をイーサリアムにブリッジするtBTCの仕組みとは

tBTCは、スマ(Summa)とキープネットワーク(Keep Network)によるワーキンググループから提案された仕組みで、マルチシグ・カストディと簡易版支払い検証(SPV)、メイカーダオ(MakerDAO)から影響を受けた担保マネジメントスマートコントラクトの3つの仕組みを応用して、特定する第三者への信用を最低限にビットコインをイーサリアムにブリッジすることを実現しています。

tBTCはマルチシグによる複数の署名グループでビットコインを保管してイーサリアム上でtBTCを発行し、それでありながらtBTC保有者はいつでもビットコインを引き出せるということを実装しています。

tBTCの基本的な生成サイクルは以下のようになります。

  1. デポジットをする人はイーサリアム上でスマートコントラクトにリクエストトランザクションを送り、tBTCの発行したい意思を宣言する。
  2. スマートコントラクトは、M of Nのマルチシグによるビットコインのデポジットアドレスを生成する。
  3. デポジットする人は、デポジットアドレスに対してBTCを送る。
  4. そのトランザクションをSPVで、イーサリアム上のスマートコントラクトに送ることで tBTCを受け取る。

このときM of Nのマルチシグアドレスの保有者らは、担保資産をイーサリアム上のスマートコントラクトにデポジットすることが義務付けされます。
tBTCの発行総量に対して、担保資産の総額は200%以上などの閾値が設けられ、安定的に運用されるのであれば、担保資産の価値はtBTCの発行量を常に上回ることが期待されます。恐らく担保資産はETHが想定されますが、その担保資産を超える額以上のtBTCは基本的に発行ができません。

BTCの価格が上がる、またはETHの価格が下がることによって、tBTCの発行量と担保資産の価値が設定した閾値以上に乖離した場合、担保資産を精算してtBTCの保有者に返還するスマートコントラクトが設定されています。M of Nのマルチシグカストディアンは、自身の資産を担保に差し出しtBTCをマネジメントする代わりに、tBTCの発行時とBTCへの償還時に手数料収入を得られます。

WBTCとTBTCとの違い

出典:The Use Cases of Decentralized BTC on Ethereum

価格取得オラクルをどのように機能させるかなどの問題は発生しますが、tBTCは、単一のカストディアンを信用せずともブリッジを実現する現実的な提案をしています。より詳しくはスペックペーパーを参照すると良いでしょう。

まとめ

tBTCは未だPoCレベルの取り組みではあるものの、今後の発展次第では面白いプロジェクトに成長する可能性があるでしょう。このようなビットコインの機能を拡張して新しいアプリケーションなどを構築しようとするプロジェクトは他にも存在します。

分散型金融はイーサリアムのスマートコントラクトを介して実装されることが依然主要ですが、ビットコインの取り組みも調べてみると良いでしょう。筆者のこちらの記事ではそれらを広く概観しています。

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