ビットコイン(BTC)急騰はイラン国内の需要増加が原因ではない?データから見える真実

ビットコインは本当にイランで買われたのか

2020年1月3日に、イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ(Qassem Soleimani)司令官が無人機による攻撃で殺害されてから、アメリカとイラン間での政治的緊張が高まっていましたが、その事件直後、ビットコイン(BTC)の価格が急上昇しました。

この価格高騰について、一部では資産の逃避先として、イランの人々がビットコインに群がっているという意見がある一方で、フィンランドのP2P取引所ローカルビットコインズ(LocalBitcoins)のデータからは、別な側面が見て取れます。

取引所出来高分析サービスを提供するユースフルチューリップ(UsefulTulips.org)のデータによると、避難場所としてビットコインが購入されているという考えは間違いであり、逆にイラン国内におけるビットコインへの興味は低下しているということです。

データ上に存在しないピーク

ビットコインが政治的危機に対するリスクヘッジになっているというシナリオが正しいとすると、世界最大のP2P取引所であるローカルビットコインでも買いの勢いが見られ、高騰が起こるはずです。しかし、殺害事件が起こった週にビットコインはわずかに708ドル(約77,880円)の値動きをしただけで、シナリオとつじつまが合っていません。

イラン国内でビットコインを購入することへの関心は、2019年の夏以降下がり続けています。仮想通貨に資本を割り当てていた少数のイラン人投資家は、純粋な投機目的で購入していただけのようです。香港のニュースサイト、ビーインクリプト(BeInCrypto)では、ビットコインの買いが増加した理由として、不安定な時期に自国通貨急落への不安を持った投資家たちが、金や原油ではなくビットコインを避難先として選ぶ可能性を期待して、ビットコインを購入した投資家がいたためだとも考えられています。

上昇するのはビットコインではなく、金と原油

仮想通貨アナリストのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)は、それぞれの資産が上がったタイミングに目を向けるように促しています。報復攻撃直後に金と原油が値を上げたのに対し、ビットコインはニュースの後に一度価格を下げてから、そのおよそ1時間後に値を上げています。

中東の現状を考慮した上で紛争が悪化していく可能性を踏まえると、ビットコインを逃避資産とするシナリオにもうなずけます。しかし、個人投資家が潜在的な不安定さを回避するためなら、取引所を問わずにビットコインを買うはずです。

もしもシナリオが事実だとすれば、わずかでもイラン国内でのビットコイン買いが増加するはずです。しかし、ローカルビットコインのイランにおける取引量のデータによると、バブル期では週に10万ドル(約1,100万円)ほどであったのに対して、事件が起こった週の出来高はわずか1,000ドル(約11万円)未満でした。これにより、イラン国内でのビットコイン取引はほぼ行われていないに近いのではないかとも示唆されています。

ビットコイン(BTC)の価格・相場・チャート

参考
‘Iran Buying Bitcoin’ Narrative Quashed by LocalBitcoins Data

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