モバイル決済、ブロックチェーン・ウォレットなどの採用は急速に進む、ドイツ銀行調査

「デジタル人民元は間違いなく、世界の金融市場における米ドルの優位性を損なう」と、ドイツ銀行が分析しています。これは同銀が発表した「決済の将来(The Future of Payments)」と題する調査結果の3部の中の第1部で明らかにされました。

デジタル決済は紙幣と併存、光のようなスピードで成長

調査結果は要約すると、法定通貨(現金)は「キャッシュレス時代到来」という大方の予想に反して、今後何十年も経済の一部としてとどまるが、同時に①デジタル決済が光のようなスピードで成長する②モバイル決済は今後5年、ブロックチェーン・ウォレットは10年後には4倍に成長する③暗号資産(仮想通貨)は決済基準に革命をもたらす能力があるーと結論付けています。

調査は米国、英国、中国、ドイツ、フランス、イタリアの6カ国で3,600人を対象に実施されました。現金が今後も長く生き残る要因は、紙幣は支出をモニターしやすく、支払いも簡単で利便性があり、どこでも通用し、安全かつ誰にも知られず購入できることなどの特徴によります。現金はさらにまた、チップとして渡しやすく、サイバー攻撃も避けられると指摘されています。

現金は生き残る可能性が大きいでしょうが、この期間にデジタル決済は高速で成長して、デビットカードなどプラスチックカードがやがて消滅する可能性があります。ブロックチェーン・ウォレットのユーザーは、インターネットのユーザーが広がった時代を再現するかのように、10年後には4倍の2億に達すると同銀は読んでいます。

デジタル人民元の出現で米ドル優位性は損なわれるのか?

ドイツ銀行は特に中国に注目し、「中国(そしてインド)が電子決済、仮想通貨、P2P戦略を重視して開発していることから、世界の経済力の中心がシフトする可能性がある」と予測しています。同銀によると、中国は中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)を開発しており、それによって「デジタル人民元の出現によって、世界の金融市場におけるドル優位性は間違いなく損なう」と予測しています。

市場価格1位のビットコイン(BTC)について、同銀はビットコインが極めてボラティリティ(価格変動)が大きいことを指摘して、その価格の揺れを最低限に抑えるため、法定通貨と連動するスーテーブルコインの利用が進んでいることを挙げて、「価格の安定には通常、ある種の信頼できる仲介もしくは中央集権化されたインフラストラクチャーが必要になる」と説明しています。

「仮想通貨は決済に革命をもたらす」

ドイツ銀行によると、仮想通貨はなお初期採用段階にあるが、「急速に進むデジタル化社会と金融危機後の環境という状況の中で、さらなる試験的利用が進むことを期待したい」と述べています。

仮想通貨の普及と採用について見ると、小売店などが決済手段として仮想通貨を受け入れ始めてはいるが、採用する小売店の数はまだまだ少ない状況です。

ビットコインによる決済は全体として目覚ましく進んでいますが、全世界で行われている決済額はなお「ほんのわずか一部」を占めているだけです。ドイツ銀行は「にもかかわらず仮想通貨は、決済の基準に革命をもたらす可能性を持っている」と結論付けています。

ビットコイン(BTC)の価格・相場・チャート

参考
Part I. Cash: the Dinosaur Will Survive … For Now

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