仮想通貨市場暴落の影響
3月12日から13日にかけて発生した仮想通貨の大暴落で、トレーダーが大きな利益をあげた3つ手法について米大手仮想通貨取引所コインベースが、ブログで解説した。 デリバティブ裁定取引とステーブルコイン相場、MakerDAOのオークションの3つの分野で利益確保のチャンスが発生していたという。
1. デリバティブ裁定取引のケース
まず、現物取引と先物契約で生じる価格差を利用したデリバティブ裁定取引において、暴落による急激な市場センチメントの転換が、チャンスを作り出したとコインベースは指摘している。
コインベースは、仮想通貨市場は全体的に、通常は強気の傾向があるとしている。同取引所の仮想通貨販売プラットフォームでは、平均取引量の60%が購入(買い)であり、先物市場は現物市場を上回る強気傾向があるため、価格の差を利用したデリバティブ裁定取引が盛んに行われることにつながる。その結果、仮想通貨購入のための現金/ステーブルコイン借り入れ需要が高まる。
しかし、市場センチメントが逆転すると、リスク回避のため次の現象が発生する:
1. 仮想通貨をショートするための仮想通貨借入需要が増加
2. 仮想通貨をロングするための現金/ステーブルコイン借入需要が減少
3. 先物市場が弱気に転換し、ステーブルコイン需要が仮想通貨需要に転ずる
レンディングサービスを提供するCompoundの貸出金利の推移グラフが今回の転換点を如実に表している。
3月の暴落時にトレーダーは、先物アービトラージのチャンスを掴むため、仮想通貨の借り入れを行うとともに、現物市場で即時に売り抜け、先物でロングのポジションをとったという。特にボラティリティが高い時期にリターンを増大させ、リスクを回避するために使われる手法だとコインデスクは解説している。
2. ステーブルコイン相場変動のケース
ステーブルコイン市場では、仮想通貨相場の暴落に伴い法定通貨に準じた資産とみなされ、需要が高まった結果、プレミアム付きで取引された。 そのためステーブルコインの発行量も増加、アービトラージ取引のためのオンチェーン活動が爆発的な拡大を見せることになった。
しかしアービトラージの発生は短期間で終了する。USDTの場合、需要がピークに達した3月12日には、$1.05で取引されたが、数日後には元値に戻している。
今回のような市場の混乱は、ステーブルコインがさらに普及するチャンスになるとコインベースは述べている。ステーブルコインの需要の高まりは、仮想通貨から法定通貨への回帰ではなく、仮想通貨市場への再度、参入するために待機している資本だと説明している。
3. MakerDAOのケース
分散型ステーブルコインDAIの発行・管理プラットフォームMakerDAOでは、担保となるイーサリアム価格の暴落により、システムが必要とする担保率を下回る事態が発生した。そのため、精算機能により大量のイーサリアム がオークションにかけられたが、大幅な価格の下落により、イーサリアムネットワークが混雑し手数料が高騰した結果、3時間にわたるオークションの間、入札者が1人という異常な事態に陥った。
最終的にこの入札者は1ドルで、400万ドルに相当するETHを落札する結果となった。
MakerDAOにとっては大きな損失となったが、この損失を補うため、MKRトークンを発行・販売する二次オークションプロセスを追加することで対処した。 現在では十分な担保がを確保した状態に回復しているという。
今回の仮想通貨市場の大暴落が引き起こした様々な状況は、多く分野で課題を浮き彫りにしたようだが、今後さらに、大きなリスクにも対処できるシステムの構築が進む可能性を期待したい。