暗号通貨は相場の観点では、とっくに機関投資家のOTC取引が主戦場であるという事実を個人投資家は認識するべきでしょう。本コラムではその点について考察します。
OTC取引(トレード)とは
まずはじめに、OTC取引とは「Over The Counter」の略で、日本語では店頭取引と訳されます。ビットコイン(Bitcoin)をはじめとした暗号通貨は取引所の板取引のボリュームが従来の株式市場などと比べ活発ではなく、数千万円くらいのビットコインを買ったり、売ったりしようとすると、それらを全部約定するのは時間を要します。
また、板が薄い取引所で買おうとすればその行為によって価格が上がってしまいますし、逆をすると価格が下がってしまい、思うような価格で売買できないことも多くあります。数千万円の取引ではなく、取引金額が億単位になれば、それはより顕著になります。これを流動性コストと言います。
この流動性コストを嫌う大口投資家や機関投資家は、OTC取引(トレード)を使用します。
主要なOTC業者の動き
アメリカではOTCトレーディングを提供する代表的な企業がいくつかありますが、そのうちの主要な1社であるCircle(サークル)のOTCデスクの取引ボリュームは、$24Billion(約2兆6,340億万円)であったと報道されています。(参照)
Circleによると、OTC取引のパートナー数は1,000を超えており、取引所やトークンプロジェクト、ファンドなどが顧客になっているといいます。Circleは、2019年はさらにOTCが活発になると予想をしています。
また、Genesis Capital社(ジェネシス・キャピタル)は、直近10ヶ月で1Billion(約1,100億円)、2018Q4(第4四半期)だけでは$500M(約550億円)の暗号通貨のレンディングを実施したと発表しています。このレンディングとは、借りた暗号通貨、つまり当然ショートポジションを指します。同じくレンディングプラットフォームのBlockFiは、去年の6月から売上が10倍になっているといいます。(参照)
これまでリテール投資家を主な顧客としていた世界最大手の取引所の最大手のBinanceも、OTCデスク利用ユーザーの一般募集をスタートしています。同社ブログによると、バイナンス(Binance)では、1取引20BTCを最小単位としてOTCに参加できるそうです。(参照)
暗号通貨の相場はすでに機関投資家のOTC取引が主戦場
OTCの取引ボリュームは、そのOTC取引所が公表しない限りは明らかになりません。そのため、あくまで参考程度であることが前提にはなりますが、筆者が複数の関係者にヒアリングしたところによると、すでに暗号通貨の全取引量の50%以上であることはほぼ確実である見方が強く、すでに70%くらいになっていてもおかしくないとも言われます。
そして、2019年にこの割合はさらに増えることが予想されます。
その理由は、様々なOTC業者が新規参入してくることや、カストディなどの周辺サービス・取引インフラの増加によります。個人投資家は、相場に最も影響が大きい主戦場は、こういったマーケットであるという事実は認識したほうが良いでしょう。
機関投資家やヘッジファンドがどのような運用をしているか考察する事例として下記のレポートを配信しています。Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)の年間報告書は、プロのヘッジファンドが2018年にどのような運用をし、2019年に何を見据えているか非常に良い教材ですので解説しました。
参考:著名クリプトファンドのMulticoin Capitalの2018年の年間報告書を読む
2019年は今まで以上に機関投資家の資金が暗号通貨市場の主戦場になるでしょう。
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