米国では通信最大手AT&T、エレクトロニクスのアヴネット(Avnet)、スターバックスなど大手企業が、続々とビットコイン(BTC)など有力仮想通貨による決済を認めたり、認めようようとしていますが、大多数の消費者は実はそのような決済を受け入れていないことが分かりました。
米ブロックチェーン・仮想通貨研究調査会社チェーンアナリシス(Chainalysis Inc.)によると、買い物など商取引にビットコインが使われた割合は、驚いたことに2019年1-4月の期間に僅かに1.3%に過ぎず、先立つ2年間とほぼ変わりませんでした。さてその理由は何でしょうか?
ビットコイン(BTC)の一番の使い道は投機が現実
エコノミストの分析では、その理由は「ビットコイン(BTC)の一番の使い道は今でも投機」ということになります。2,3日あるいは数時間で2桁以上の割合で価格が上昇する(あるいは下落する)こともあるビットコインなど仮想通貨を、サービスの支払いに充てるユーザーは、よほどの金持ちしかいないだろうとの見方です。ちなみに世間では、使うより貯めこむことを勧める「hodler(仮想通貨が大きく値上げするまで持ち続ける人たちのことで、ホドラーと言います)」という新語が生まれました。
チェーンアナリシスのシニアエコノミストであるキム・グラウアー(Kim Grauer)氏は「このような調査結果が示すものは、ビットコインの一番の使い道は今でも投機であり、日常の買い物の支払いにビットコインを主流に使うことは、まだ現実的ではないということだ」と述べています。
ビットコイン(BTC)のユースケースは90%余りが取引所の扱い
チェーンアナリシスのデータによると、ビットコインのユースケースは2017年から2019年(1-4月)までの期間、90%以上が交換・取引所(Exchange)で行われ、 残る10%弱内に商取引(Merchant)、ダークネット(Darknet)、P2P取引、マイニング(採掘)その他に向けられていました。
チェーンアナリシスはサービスプロバイダーのデータも追っています。例えば、最近AT&Tから決済サービスプロバイダーとして採用されたビットペイ(BitPay Inc.)は、2017、18年10憶ドル(約1,080億円)を処理しています。AT&Tは、ビットコインあるいは法定通貨もしくはその両方を分割してビットペイから受け取る選択肢を行使するだけです。
AT&Tが、法定通貨で100%受け取ることを選択すると、すべての処理の手数料として、ビットペイが1%を差し引いて、翌日の営業日にAT&Tの銀行口座に振り込むことになります。AT&Tは1日足らずのこのプロセスの中で、ビットコイン価格のボラティリティ(変動性)の影響をほとんど受けずに受信料金を受け取れることになります。
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商取引のビットコイン決済はこの3年間ほとんど伸びず僅か1%前後
ビットコインの市場価格は19年1月以来、5月末までに一時9,000ドル(約97万円)を超えてほぼ倍増しました。ビットペイのチーフコマーシャルオフィサー(CCO)であるソニー・シン(Sonny Singh)氏は「われわれは昨年(2018年)からずっと追跡しているが、米国の消費者は概して、ビットコイン(BTC)価格が上昇すれば多めに支出する。BTC価格が2倍になれば、一部は売りに出すだろう」と分析しました。
チェーンアナリシスによると、ビットペイのこの種の取引は巨額です。VISAだけでも毎日の取引額が18年にほぼ5億ドル(約540億円)に達し、同年の決済と現金処理は11兆2,000億ドル(約1,200兆円)になりました。全体的な商取引活動は、17年末以のピーク時から下落続きです。
仮想通貨バブル時の17年末ですら、ビットコインの商取引での決済は全体の1.5%、18年は0.9%に落ちました。BTCによる商取引決済は19年(1-4月)になっても1.3%ですから、期待と現実との落差は大きいようです。ちなみに19年の同期間における取引所の決済は89.7%(18年は91.9%)でした。
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参考
・Bloomberg