2021年も「おうち時間」が長くなりそうですが、せっかく家にいるなら時間を有意義に使いたいものです。
おうち時間を有意義にするにはトレーニング、読書、料理などさまざまな方法がありますが、エンターテインメント・カルチャーにふれるのはいかがでしょうか。
VOD(動画配信サイト)を利用すれば好きなドラマや映画、アニメを好きなだけ楽しめます。
VODにはhuluやNetflix、Amazon Prime Video、Tverなどさまざまな種類があり、既にいずれかのサービスに加入している方も多いのではないでしょうか。
今回は、Amazon Prime Videoで観ることができる映画で、2019年にアメリカで公開され数々の賞を受賞した『1917 命をかけた伝令』を観た感想をレビューします。
『1917 命をかけた伝令』あらすじ
©YouTube『1917 命をかけた伝令』予告
舞台は1917年4月、第一次世界大戦が始まってから3年ほど経ったフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙するなかで、ドイツ軍は意図的に後退し連合国軍をヒンデンブルク線まで誘引する戦略を立てていました。
連合国であるイギリス陸軍は航空偵察によりその事実を知り、ドイツ軍への追撃作戦の中止を決定。そこでイギリス軍のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)の2人に最前線の部隊へ作戦中止を知らせる命令が下されます。
ドイツ軍へ突撃する作戦の決行は翌朝、タイムリミットはたった1日。彼らの伝令が間に合わなければ1,600名もの将兵が犠牲になるのです。その部隊にはブレイクの兄も所属しているため、家族の命を守るためにも絶対に任務を遂行しなければなりません。
2人は屍臭漂う無人地帯を抜け、どこに敵が残るかも分からない危険な戦場を無我夢中で進み続けます。刻一刻と突撃開始の時間が迫るなかで、死と隣り合わせで過酷な任務を遂行しようとする2人の旅路が描かれた物語です。
サム・メンデス監督の祖父であるアルフレッド・H・メンデスは第一次世界大戦中にイギリス軍で西部戦線の伝令を務めていました。この作品はフィクションですが、作中には監督の祖父から聞いた体験談が多数用いられています。
『1917 命をかけた伝令』のみどころ
©YouTube『1917 命をかけた伝令』予告
突如任された戦場への伝令を命がけで遂行しようとする2人の様子を、前編を通してワンカットに見える映像で映し出しています。
全編が一人の兵士の1日としてつながって見えることで、戦場を駆け抜ける臨場感と緊張感が最後まで途切れません。
長回しのワンカット撮影を採用しリアリティを追求した本作品は、第77回ゴールデングローブ賞においてドラマ部門の作品賞と監督賞の2冠。さらに第92回アカデミー賞において、撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3冠を獲得しました。
メイキング映像では、撮影にあたりさまざまな困難があったことが語られています。
作中では1日のできごとであるため、天気にも一貫性を持たせなければならず同じ天気の日にしか撮影できないこと。またすべて屋外での撮影のため自然光と天気がカギとなること。
撮影を始めたら止めることができず進むしかない、失敗できない緊張感のなかで、“完成したことが不思議なくらい”の高度な映画が生まれました。
『1917 命をかけた伝令』のレビュー
©YouTube『1917 命をかけた伝令』予告
タイムリミットは1日、たった2人に託された1,600人の命――。
司令を伝えなければ多くの仲間が敵の罠で命を落としてしまうという重圧に耐えながらも、数々の罠や爆弾が仕掛けられた敵陣をひたすら突き進む2人をカメラがぴったりと追いかけます。
撮影では光の角度や閃光の長さ、カメラワーク、機材の位置や人の動きなどを緻密に計算され、それらが演技と見事に合致しています。
それにより兵士の動きや息遣いの一つひとつがリアルに感じ、まるで自分が3人目の兵士となり実体験をしたかのような衝撃の残る作品でした。
また、塹壕や川岸などに転がっている多くの遺体と2人が救うべき1,600人の命の重さがコントラストで描かれ、これらの遺体をかき分けて戦場を進んでいく様子に「仲間の命を救いたい」という意思の強さが表現されているようにも思えます。
現代の日本では戦争は歴史上のできごととして伝えられ、世界で起きている紛争もどこか他人事のように捉えてしまいます。
もし、自分が主人公の立場だったら、仲間や家族のために同じように勇敢な行動ができるだろうか。
いつ死ぬかもわからない命の危険が迫ったらどれだけの恐怖が生まれるのだろうか。
人の命とは、死とは何なのだろうか。
ストーリーの感動や迫力もさながら、圧倒的な没入感を体験したことで戦争や命についても深く考えさせられる作品でした。