中国はこれまで7年間にわたり、デジタル人民元としてしられる中央銀行デジタル通貨(CBDC)を開発してきました。このプロジェクトはいよいよ最終的な重要なテスト段階を迎え、市民の利用への準備態勢が整います。
抽選で選ばれた北京市民に200人民元を配布
CNBC放送によると、中国は4000万人民元(約6億7000万円)のデジタル人民元を北京市民を対象に配布します。抽選で選ばれた人のみにCBDCの配布は行われます。関心のある北京市民は、2種のバンキングアプリをダウンロードして、6月7日までに登録済ませています。
抽選で選ばれた市民は、デジタル送金が可能ないわゆる祝儀袋の「紅包」を受け取る権利を取得します。紅包の中にはそれぞれ200人民元(約3,400円)が同封されており、市民はこのプロジェクトに選定されたストアで買い物ができます。この仕組みはすでに、成都や深センなど地方都市で実験済みです。
中国ではあわせて、別のプロジェクトも進行中です。5月初旬、アリババ(Alibaba)の傘下企業である大手決済サービス企業アントグループ(Ant Group)が中国人民銀行(PBOC)と提携して、データ^ベースを提供する契約を結んでいます。これはCBDCの開発を進める中国人民銀行と民間企業間の共同開発事業の1つです。
デジタル人民元の運用にイーサリアム利用の可能性も
米証券取引員会(SEC)に相当する中国証券監督管理委員会(CSRC)の科学技術監督局長であるヤオ・チエン(Yao Qian)氏は、デジタル人民元はイーサリアムネットワーク(Ethereum) もしくはFacebookが主導するディエム(Diem)のネットワークを利用する可能性を示唆しました。
プリミティブ・クリプト(Primitive Crypto )のパートナーであるドビー・ワン(Dovey Wan)氏はしかし、既存ネットワーク利用の可能性はほぼ0%と述べ、「デジタル人民元はかなり以前から公表された技術的フレームワークであり、中国人民銀行のプライベートクラウド上で運用されるだろう」と述べています。
デジタル人民元の発行について多くのメディアは、2022年北京冬季オリンピック開催に合わせて流通するだろうと報じています。PBOCの李波副副総裁は4月、「われわれは国内ユーザーのみならず海外のアスリートや訪問者にデジタル人民元を利用してもらうよう努力している」と、初めて言及しています。
人民元の国際化につながるとの声も
デジタル人民元が人民元の国際化につながり、米ドルに挑戦することになるだろうとのコメントもあります。
李波氏はこれを否定し、「人民元の国際化についてわれわれは、それは自然の成り行き次第であり、米ドルやその他の海外の通貨に取って代わることではないと繰り返してきた」と述べています。
しかし中国は一方では、タイ、香港、アラブ首長国連邦(UAE)と提携して、デジタル通貨による国際決済プロジェクトを進めていますので、人民元はまさに国際化を目指している証拠ではないかというのが多くのアナリストの見解です。
参考
・China to hand out $6.2 million in digital currency to Beijing residents as part of trial
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