ビットコインETF(上場投資信託)の上場申請に対する米証券取引委員会(SEC)の最終判断の時期が迫っています。仮想通貨業界には、広く仮想通貨に対する適切な規制ガイドラインを求める声が高まっています。ETFに対するSECの判断は、2019年内に予測される規制ガイドラインを含むSECのスタンスを知る重要な1歩になるでしょう。
規制上の権限はSECのほかCFTC、IRSなどにあり一元化は困難
仮想通貨に対する米国の規制上の権限は一元化されていません。SECのほかに商品先物取引委員会(CFTC)、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省通貨監督庁(OCC)、内国歳入庁(IRS)など、それぞれが仮想通貨に対する監督領域を主張し、2機関以上にまたがるグレーゾーンがあって、規制上の政府見解の円滑な一元化を妨げています。
さらに加えて、米国各州がそれぞれ異なる州法を導入しています。その一部は連邦機関と真っ向から対立することがあります。例えばオハイオ州は、ビットコインで納税することを認めています。
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SECへの登録は必須とクレイトンSEC委員長
SECのジェイ・クレイトン(Jay Clayton)委員長は、ビットコイン取引所の認可の前提として、より優れた市場監視と仮想通貨保管の必要性を強調します。同委員長は併せて、関連する法律のコンプライアンスを保証するため、すべてのICOはSECに登録する義務があると強調しています。
クレイトン委員長は「ICOを利用する資金調達に当たっては、私募発行かSECへの登録のいずれかを選択しなくてはならない」と述べています。同委員長はSECへの登録を必要としない私募について補足して、ICOは「海外で実施する」か、それとも私募の根拠となる「私的募集除外規定」に準拠すれば、SECによる規制上の権限範囲外となると助言します。
SECの法律専門家でコミッショナーのヘスター・ピアス(Hester Peirce)氏は、SECがビットコインETFの9件の上場申請をいったん拒否した例を挙げて、SECは時には「仮想通貨を子細に調査する」傾向があることを指摘して、「確かにほかの資産クラスとはかなり別扱いしている」ことを認めました。
SECに柔軟な対応求める声が高まっている
セント・メアリー大学法学部教授のアンジェラ・ウォルチ(Angela Walch)氏は、多様な考え方を持つことの重要性を強調して、「規制当局者は消費者保護、イノベーション推進、システム障害回避の問題を一挙に対応しようと危ない橋を渡っている。クレイトン委員長を含むSECコミッショナーの多くは、消費者と金融システムの保護を第1に重視し、イノベーションをニの次に見ているように思われる。しかし、ピアス氏はその考えに反対しているようだ」とコメントしています。
バーンズ&ソンバーグ法律事務所(Barnes & Thornburg LLP)のパートナーであるトレース・シュメルツ(Trace Schmeltz)氏は、仮想通貨市場、特にETFの可能性を含むビットコインの規制に当たって、SECは次のような4つの問題を重視していると指摘します。
- 市場操作(Market Manipulation):薄商いで規制が緩やかなスポット市場は、市場操作される可能性が大きい。
- 価格変動(Price Volatility):ETFは原投資の価格変動とマッチしなくてはならないことから、変動の激しい相場を正確に価格設定することが難しいという懸念がある。
- 流動性(Liquidity):特にETF投資を支える1940年投資会社法に対する懸念に関連して、投資が容易に現金化されうるような市場の適切な流動性が保たれること。
- 物理的保管(Physical Custody):ETFは先物よりさらに確実に、ビットコインの物理的保管が確保・実証されなければならない。
シュメルツ氏はこれら規制上の問題の抜本的解決に先立って、市場のイノベーションを図り、ビットコインETFを承認すべき好機であると主張しています。
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参考
・News.Bitcoin.com