ブロックチェーンエコシステムでのプライバシーについて考える

プライバシーに関する問題が増えた現代

インターネットが発展しさまざまなサービスがライフスタイルを豊かにする一方で、近年はインターネットに関するプライバシーが重視され始めている。他人の個人情報や写真を、インターネット上で勝手に載せたりするなどのプライバシー侵害になる事態も増え、世界最大のソーシャルネットワーキングサービスを提供するFacebookにおいてもプライバシーに関する問題が浮上し大きな騒ぎとなった。そこで、ブロックチェーンエコシステムにおいてのプライバシーとはどういうことか、Enigma(エニグマ)チームによるプライバシーの考え方をまとめる。

エニグマイメージ
出典:Enigma Blog

ブロックチェーンにおけるプライバシーとは?

ブロックチェーンエコシステムにおけるプライバシーは、主に2つに分類することができる。1つは取引によるトランザクションのプライバシー、もう1つは分散ネットワークにおける計算上のプライバシー。それぞれがどんな意味を持つのだろうか。

トランザクションのプライバシー

分散型アプリケーションやブロックチェーンプライバシーに触れる際、はたして自分の情報は守られているのだろうかと、ほとんどの人が考えていると思われる。トランザクションのプライバシーを保護するプロジェクトとして、ジーキャッシュ(Zcash)やモネロ(Monero)などがあり、これらは一般ユーザーと受信者からトランザクションを保護することを可能とする機能を持つ。これらを用いた取引においては、送信者、受信者、トランザクションの量などはすべて難読化することができるため、特定の側面が隠される。

トランザクションのプライバシーは、個人の自由を促進する上で重要な要素となるが、現状では、価値の単純な交換を可能にするという点のみとなってしまっている。価値の交換だけでなく、より高度なトランザクションを必要とする場合、計算上のプライバシーも守る必要がある。

計算上のプライバシー

分散型ネットワークにおける計算上のプライバシーには、いくつかの要件がある。入力されたデータは暗号化され、ネットワーク上で動作するすべてのノード、また、ネットワークトランザクションの監視者からも秘密にされる必要がある。そして、ノードはこの暗号化されたデータに対して計算を実行する必要がある。さらに、計算を実行しているノードから返されたデータ結果が正しいということを保証する必要がある。

この条件を満たすことができれば、計算上のネットワークは、情報を安全でプライベートに保ち、ブロックチェーンのメリットを維持することができる。ネットワーク上のすべてのデータを公開することなく、計算を可能にする。

本当の意味での「プライバシーネットワーク」

イーサリアム(Ethereum)などのブロックチェーンは、ビットコイン(Bitcoin)とは異なり、単なる価値交換だけではなくスマートコントラクトなどを使用し、条件付きで任意の計算を実行する機能がある。Enigmaでは、データを暗号化したまま実行できるプライバシー保護の方法がある。

EnigmaによってEthereumをアップグレードすることが可能となるのだ。データ自体を隠し、計算自体は見られないようにしたままEthereumネットワークを維持できる。Enigmaにおけるプライバシー保護の方法は、安全なエンクレーブ(実行環境)とマルチパーティコンピューティング(MPC)にある。エンクレーブとは、データがハードウェア自体の外から見えないように保護するための物理チップのことである。MPCの詳細については、MITの論文(Decentralizing Privacy: Using Blockchain to Protect Personal Data)を参照してみてほしい。

ブロックチェーンにおけるプライバシー問題の重点は、どこにあるのだろうか。それは、ブロックチェーンが可能にする分散化されたエコシステムに基準がある。ブロックチェーンの性質を利用することで、一定の管理者に依存することなくネットワークを稼働させることができる。これが分散型ネットワークだ。

分散型ネットワークはこれまでの社会構造から分離された存在となり、一定の管理者が必要ないため、いわば勝手に動いているようにも見える。だが、それを可能とするブロックチェーンの性質上、ネットワークのトランザクションはパブリックな台帳に置かれ、誰でもデータを確認することができる。

分散型ネットワークを目指す上で、データが公開されていては、本当に分散されたとは言えないとEnigmaは考える。分散WebやDappsなどのサービスを扱う上でも、データのプライバシーが守られている必要があるからだ。Enigmaプロトコルを使っての開発を進めるパートナー企業は、現代やこれからのプライバシー問題に対応することができるのだろうか。

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参考
Enigma Blog

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