
調査企業によると、ブロックチェーンへの投資が今後強化されていく方向にあるという。米国においては、2018年から2023年にかけてブロックチェーンを採用する小売業者が75倍も増加すると予想されている。今回は、リサーチ・アンド・マーケット(Reserch And Markets)とジュニパー・リサーチ(Juniper Reserch)の調査結果をもとにブロックチェーンテクノロジーの市場動向について考えていく。
Research And Marketsによる調査
世界最大の市場調査企業であるリサーチ・アンド・マーケット社によると、米国の小売部門におけるブロックチェーン関連の支出は増加し、2018年に1億1,240万ドル(約123億6,400万円)に達した。
そして、2019年は2億800万ドル(約308億円)となり、2025年には26億ドル(約2,860億円)まで増加すると予想している。また、年平均成長率(CAGR)は43.9%を記録する予想となっている。ブロックチェーンテクノロジーを使った主な投資分野としては、製品追跡や偽造品識別、支払請求、保険などの損害査定、電子保証管理、契約管理、サプライチェーンマネジメントとなっている。
Juniper Researchによる調査
英国を拠点に置くジュニパー・リサーチ(Juniper Research)社によると、小売業におけるブロックチェーン上取引の年間売り上げは2023年までに45億ドル(約4,950億円)に達するとしている。
また同社は、ブロックチェーンの多用途性が小売業者にサプライチェーンの透明性、顧客ロイヤルティ管理、業務効率の向上を促進し、他の分野よりも早く採用されると予想している。小売業者は、アリババのような独自のBaaS(サービスとしてのブロックチェーン)プラットフォームを立ち上げたり、プロバイダーとの提携を選ぶ業者もいる。同社のレポートによると、米国でブロックチェーンテクノロジーを使用する小売業者の数は2018年から2023年にかけて7,500%以上増加するとし、2023年末までに、1万5,000の小売業者がブロックチェーンテクノロジーを使用すると予想している。
ブロックチェーンの開発に取り組む主要企業
ジュニパー・リサーチは、17のブロックチェーン開発企業を対象に、俊敏性、プレゼンス、イノベーションレベルを採点し、ソリューションの複雑さとその分野の見通しについて評価した。評価結果によるランクは次の通りだ。
- IBM
- デジタル・アセット・ホールディングス(Digital Asset holdings)
- ネム(NEM)プロジェクト
- アプライド・ブロックチェーン(Applied Blockchain)
- R3
小売業の中でも積極的にブロックチェーンの応用に取り組む、世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートについて、ブロックチェーンコンソーシアムであるハイパーレッジャー(Hyperledger)は、「食品サプライチェーンにおける透明性をリードしている」と評価した。
ウォルマートは、ブロックチェーンに注意を向ける前に、サプライチェーンにおける透明性に取り組むための多くのアプローチをテストした。米国と中国で2つのプルーフ・オブ・コンセプト(POC)プロジェクトを実施し、テクノロジーとハイパーレッジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)への取り組みを強化。、ネスレやユニリーバも関わるIBMの「IBM Food Trust」というプロジェクトに参加している。
システムのバックエンドを支えるブロックチェーン
上記の調査報告によると、今後数年間でブロックチェーンテクノロジーの市場に対して強気な評価をしていることがわかる。ブロックチェーンや暗号通貨をシステムの側面からみると、その多様性に期待ができる。ブロックチェーンですべての社会問題を解決できるわけではないが、その特異性から有効に働く場面も多い。
原料の段階から製品やサービスが消費者に届くまでの全プロセスをみるサプライチェーンに関しては、ブロックチェーンを活用することで透明性のあるものとなる。食品をはじめとし医療などあらゆるサプライチェーンで効果を発揮できるのではないか。これは、偽造品流通の問題へも応用することができる。
このようにブロックチェーンテクノロジーは、システムの裏側でサービスを支えるものとして使われることが増えてくるように思う。
ジュニパー・リサーチによるブロックチェーンの評価ランキングには、NEMがランクインしている。NEMは、ブロックチェーン上のトークンを独自に作ることができ、商品などと結びつけ管理することもできるだろう。また、NEMの機能を使った公証サービスもある。これらのテクノロジーを応用しシステム開発することで、サプライチェーン管理を支えるシステムとして機能できるかもしれない。
投資やお金という面が強い風潮の中で、暗号通貨とブロックチェーンを切り離して考えることも重要かもしれない。そして、ブロックチェーンとは何かを再考してほしい。
【こんな記事も読まれています】
・ネム(NEM)ブロックチェーンを用いたアプリがコンテストで大賞に
・あと5年で仮想通貨決済が主流に?IMF(国際通貨基金)のアンケート結果