イーサリアム(ETH)以外でDAIが発行可能に?MakerDAOでその仕組みがまもなく実装

複数トークンを担保にアセット発行

メイカーダオ(MakerDAO)のマルチ・コラテラル・ダイ(Multi-Collateral Dai:MCD)という複数担保アセットの実装がいよいよ近づいています。

ダイ(DAI)はイーサリアム(ETH)を担保にして発行されるアセットですが、今回実装されるMCDとは、この担保資産の種類を増やすという試みです。そして、その担保資産の種類はメイカー(MKR)トークンホルダーによる投票を経たガバナンスによって決定する予定です。この方法は手数料であるスタビリティーフィー(Stability Fee)を決めるのと同じです。

担保資産として採用されるトークンを選出する投票が7月29日にスタートします。候補トークンは下記の7種になっています。

  • オーガー(Augur:REP)
  • ベーシック・アテンション・トークン(Basic Attention Token:BAT)
  • ディジックスダオ(DigixDAO:DGD)
  • イーサリアム(ETH)
  • ゴーレム(Golem:GNT)
  • オミセゴー(OmiseGo:OMG)
  • ゼロエックス(0x:ZRX)

主要なERC20トークンであり、妥当な選出でしょう。ただし、開発に携わっているメイカー・ファウンデーション(Maker Foundation)は、これはテストフェーズであり、MakerDAOが事前に選んだトークンであることを過ぎないと記述しています。

参考:Multi-Collateral Dai: Collateral Types

MakerDAOの担保資産には、トークン化された全てのアセットがなり得ます。実際に採用されるかどうかはリスクパラメータとコミュニティがガバナンスプロセスを経て合意するかどうか次第ですが、どのようなトークンでも担保資産になることが可能です。例えば、ゴールドをERCトークン化したアセットが担保入りする可能性もありますし、ビットコイン(BTC)をERC20トークンに裏付けしたラップド・ビットコイン(WBTC)が担保になることも可能性としてはあり得ます。

MKRトークンの潜在価値

DAIは既にイーサリアムの経済圏で信頼が置かれるステーブルコインであり、分散型金融(DeFi)のエコシステムの中でも最も採用されています。現在、DAIとETHの関係は兌換紙幣と金の関係に近いです。

これはどういったことかというと、DAIという通貨の裏付けは全てコントラクトにデポジットされているETHに基づいており、そのDAIは債務ポジションであるCDPを開いたユーザーが将来に返済する負債です。その内容はブロックチェーン上で確認でき、スマートコントラクトで制御されます。

今、DAIという通貨はETH本位制ですが、MCDは、金本位制のようなルールの中でトークンホルダーでガバナンスをしてアセットを混ぜる仕組みであるとも言えます。

この金本位制的性質を認知して改めて気付くことはMKRトークンの価値です。MKRトークンは、MCDの担保資産をどれにするかに関しても干渉ができるガバナンストークンです。そのように考えると、MKRトークンは金本位制の世界で、大豆でも米でも、金の仲間入りにさせることができるような投票権だとも言え、潜在価値は非常に高いものと思われます。

そういった意味でDAIの複数担保とそれを決定するMKRトークンの仕組みは、新しい実験であると言えるでしょう。この仕組みはMakerDAOがメインネットをローンチした2018年には考案されていたものの、リスク勘案とコードの安全性にこだわり、開発に時間をかけてきました。MCDのローンチは、DeFiのエコシステムの中で注目されるイベントになるでしょう。

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