日本では暗号通貨業界の経営者や起業家が、規制などを理由に行いたい事業ができないというような事例は頻繁に散見されます。日本では取引所に上場しているコインの種類が諸外国と比べて少ないことや、ノンカストディの分散型取引所(DEX)や少しでもトークンの交換機能が含まれているアプリケーションは交換業のライセンスが求められることがその典型です。
こういった規制の厳しさによって、日本の暗号通貨・ブロックチェーン業界企業が諸外国と差をつけられることを憂う声もあります。しかし、こういった事例は日本だけでなく、アメリカでも見られます。
Circle傘下のPoloniexがバミューダ諸島にオフショアオフィスを開設
サークル(Circle)傘下の取引所であるポロニエックス(Poloniex)がバミューダ諸島にオフィスを開設したとの報道がありました。米メディアでのインタビューによると同取引所のユーザーの70%はアメリカ国民以外のユーザーで、バミューダでのオペレーションはそのアメリカ以外のユーザーを対象に行うとのことが語られています。
同社の最高経営責任者(CEO)のジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は、5月にもアメリカの暗号通貨への規制は厳しすぎるという主旨のブログを公開しています。
Poloniexは、監督機関からいくつかのアセットは証券とみなされる可能性があるとして、対象の銘柄をアメリカのIPアドレスからアクセスできないようにしました。アレール氏は同ブログで、アメリカの法律で証券と認定するための法律は85年も前に制定されたもので、裁判事例は73年前のものを参考にしていることに苦言を呈しています。
Poloniexは、バミューダ拠点開設にあたり、グローバルのユーザーに向けては、より多くの種類のアセットを増やし、またその他の関連サービスも積極的に増やしていくことをアナウンスしています。
このようにアメリカのプレーヤーが関わっていても、オフショアに目を向けるような企業はPoloniexだけではありません。最近開設された新しい先物取引所コインフレックス(CoinFLEX)もオフショアで運営されています。CoinFLEXはアメリカの大御所投資ファームであるデジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)やポリチェーンキャピタル(Polychain Capital)なども投資をする注目の先物取引所です。同社の詳細はこちらのレポートで解説しています。
同社はセイシェル諸島に登記をしています。実際に現物裏付けの先物、レバレッジ20倍を提供しており、これらのサービスをアメリカでは提供できないでしょう。
規制に基づいたサービスとグローバルサービスとの分離
Poloniexのような事例からは、一つの企業がアメリカ国内とアメリカ国外の2つで運営をするような形態が増えると予感させます。一方でバミューダ諸島でオペレーションしたPoloniexからのグローバルユーザーと、アメリカのユーザーが同じ板を使って取引することは、アメリカでは恐らく許されないはずです。アメリカでは、国民が取引のカウンターパートの素性が分からない場合、取引することは容易ではありません。つまり同じ板で取引ができません。
結局、フォビ(Huobi)などの取引所もアメリカに進出することを目論むも、グローバルの板とは接続できていません。ビットフライヤーなどもアメリカに進出していますが、アメリカのビットフライヤーと日本のビットフライヤーの注文板は別々に分離をしています。この時、Poloniexだけが許される可能性も低く、恐らく徐々にPoloniexのサービスもUSユーザーとグローバルユーザーに向けて分かれることになるでしょう。
そしてPoloniexがアナウンスしたように、グローバルユーザーに向けては、本来アメリカで提供したかったサービスを提供していくとしています。結局のところ規制にフラストレーションがあることは、大なり小なり差はあれど、アメリカの経営者も日本の経営者も変わらないことが伺えます。
ここから見えるこれからのトレンドは先進国で規制に基づいて運営されるサービスと、グローバルサービス(オフショアサービス)との分離です。このトレンドはしばらく続いていくことが予想されます。
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