
多くの個人投資家がトークン投資で損失
アルトコイン・トークンへの投資は簡単ではありません。特に日本国内の個人投資家においては小型のトークンを好み、2018年以降大きな損失を被った投資家も多いのではないかと推察します。
2019年3月以降、暗号通貨相場全体は回復していますが、ビットコイン(BTC)がその回復相場の多くを享受し、その他の小型トークンでビットコイン以上の価格パフォーマンスを出したものはわずかに留まります。
ビットコイン以上のパフォーマンスを記録したトークンは、BNBをはじめとした明確なキャッシュフローに紐づく取引所トークンや、(COSMOS)、LINK(ChainLink)、REN(旧称Republic Protocol)など有望なプロジェクトに限られます。
ここで難しいのは、「有望なプロジェクトとは何か」という点です。暗号通貨においては理論価格の算出は不可能であり、価格パフォーマンスが良かったCOSMOS、LINK、RENなどのフェアバリューを定量的に説明することは難しいです。
なおこの点においてBNBなどについては、当該企業の収益が四半期ごとにバーンをされ、DCF法や株価収益率のフレームワークを用いてある程度の理論価格を算出することは容易であり、例外とも言えるかもしれません。
しかしいずれにしても、多くの個人投資家の投資判断は合理的ではなく、前提となる知識も欠如しているとしてもその人なりの「有望なプロジェクト」に投資しているつもりであろうことは言うまでもありません。
技術開発が進行しビジョンがあっても投資は成功するとは限らない
有望なプロジェクト、または将来なにかしらの形で実需がつく開発が進行しているプロジェクトに投資をしても失敗する可能性があるということを説明する好例は、最近のジリカ(Zilliqa)とサンダー・コア(ThunderCore)のアナウンスでしょう。
Zilliqaの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるXinshu Dong氏は、プロジェクトチームを離脱し、ThunderCoreにおいてはチーフサイエンティストがプロジェクトを離脱しました。その後価格は大きく下げています。
The founder and CEO of $ZIL left the project and started a new one. The chief scientist of @ThunderProtocol left ahead of her planned commitment
Any hope for these babies? pic.twitter.com/fCUk3Uw3OX
— Dovey Wan
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(@DoveyWan) August 8, 2019
Zilliqaはシャーディング(並列処理)を実装し、ThunderCoreはEVM互換を持つなど、それぞれスケーラブルなパブリックブロックチェーンとして期待されていました。
シャーディングを構想するプロジェクトは数多くありますが、(Ethereum、IOSTなど)メインネットで実現したものは今のところ1つもありません。また、シャードをテストネットで走らせている事例はありますが、テストネットでクロスシャードを運用できた事例は恐らくありません。
それだけ難易度が高い実装であり、Zilliqaは実際に開発に取り組んでいる数少ないプロジェクトでしたが、CEOがプロジェクトを離脱する結果になっています。一般的に創業者や初期プロジェクトメンバーの離職は、同企業やプロジェクトの良くない状況を表すサインです。
Zilliqaは少なくともScam(詐欺的)と呼ばれるプロジェクトではないものの、少なくとも今のところ上手くいっているようには見えません。
スタートアップ、黎明期のプロジェクトに資産を投じている自覚
ここから学べることは、優秀な技術者やビジョンがそろっていてもプロジェクトは失敗する可能性があり、むしろその可能性のほうが高いということです。また、優秀な技術者やビジョンがそろっていることは最低限であるとも言い換えられます。
通常ベンチャーキャピタルは、創業初期の10~20企業に投資して5%成功すれば、残りが倒産しても、リターンを得れるような分散ポートフォリオを構築します。小型なトークンを投資対象として見るならば、このベンチャーキャピタルが投資するようなスタートアップとなんら変わりありません。
実際に創業してから数年しか経っていないのだから、もし投資をするならば、そベンチャーキャピタルと同じようなポートフォリオを構築するべきです。それでありながら、総資産の30%や50%を単一のトークンにつぎ込む個人投資家が多くいることは、損失を被って当然な状況であると言えます。
筆者の感覚としては、単一の小型トークンに拠出する資産は最大でもポートフォリオの2~3%でしょう。そのようなトークンを数種類持ち、60%以上の資産は株や債券、ビットコインも持っておく方が望ましいはずです。個人投資家に必要なことは、スタートアップや黎明期のプロジェクトに資産を投じている自覚を持つことでしょう。
アーリーステージのプロジェクトの投資機会を暗号通貨・ブロックチェーンはもたらしましたが、その恩恵はある程度の投資知識を持ち、加えて実際に実行できた人だけが享受できることはこれまでもこれからも変わらないでしょう。
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