
中国人民銀行がデジタル通貨電子決済(DCEP)と呼ばれる暗号資産(仮想通貨)を発行することがほぼ間違いなくなっています。全国人民代表大会(全人代)常務委員会が2019年10月26日、仮想通貨の新法「暗号法(Cryptography Law)」を採択、20年1月1日発効することになり、ブロックチェーン技術開発とそれに基づく人民元のデジタル通貨を国家計画として進めることが確認されました。
デジタル通貨電子決済(DCEP)は真の仮想通貨ではなくサイバー空間の法定通貨
人民元のデジタル通貨は、中国ではデジタル通貨電子決済(Digital Currency Electronic Payment:DCEP)と呼ばれています。それがどのようなものについて、中国国際経済交流センター(CCIEE)の黄奇帆(Huang Qifan)副理事長は10月29日、バンドとも呼ばれる上海の外灘地区で開かれた初の外灘サミット(Bund Summit)でDCEPの発行を認めました。
言うまでもなく、このデジタル通貨は真に仮想通貨と言える5つの中心的支柱、つまりオープン(open)であり、制限なく(limitless)、中立(neutral)で検閲に強く(censorship resistant)、公開(public)でなくてはならないのに、そのいずれにも該当しないので、サイバースペースの法定通貨と呼ぶのが適切でしょう。
既存通貨のデジタル化でなく準備通貨の置換そのもの
中国の学界、政府、専門機関などの有識者40人で構成する金融政策組織「中国金融40人フォーラム(China Finance 40 Forum=CF40)」は、黄奇帆副理事長のスピーチの一端を、Twitter上で次のように紹介しています。
「デジタル通貨による電子決済(DCEP)の重要性は、既存の通貨をデジタル化するものではなく、準備通貨そのものを置き換えることにある。デジタル通貨による電子決済は、口座の取引処理依存を減らし、人民元の流通と国際化に有用となる」
「DCEPは同時に、通貨創出や帳簿などに関連するリアルタイムのデータ収集を実現して、通貨の引き当てや金融政策の実行に有益な参考資料を提供する」
DCEPのもう1つの側面は国際的な決済システムであること
黄奇帆副理事長はさらに、中国はこのプロジェクト開発に5、6年を費やし、DCEPという期待通りの官製仮想通貨を発行する最初の国になると語りました。同副理事長は「DCEPは、リアルタイムのデータを収集することができる」と誇らしげに発表しまた。
黄奇帆氏は、DCEPの特質としてもう1つの側面、つまりDCEPは国際的な決済ステムになると宣言して、「(国際的な決済組織である)SWIFT(国際銀行間金融通信協会)は時代遅れ、非効率でコスト高のシステムである」と切り捨てました。同氏はまた、DCEPはとりわけ国内総生産(GDP)、財政収支、国家信用に直接リンクするデジタル通貨であると語りました。
リブラを強く意識 ソブリンマネーではないとその有用性を否定
DCEPはFacebookが発行を計画しているリブラ(Libra)に類似していると言われています。同氏はDCEPの採用に関連して、Facebookのステーブルコイン「リブラ(Libra)」について、ソブリンマネー(法定通貨)に挑戦する民間発行のデジタル通貨は失敗すると断じて次のように述べています。
「ブロックチェーン技術に基づくこれら非中央集権型の通貨は、ソブリンマネーとは別物である。発行基盤は保証されていない。通貨の価値は安定せず、真に社会的富を形成することは難しい。リブラが成功するとは思わない」と語りました。
参考
・China launches its own state cryptocurrency DCEP
・China Digital Currency Will Replace SWIFT: Huang Qifan
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