フィデリティ(Fidelity)は、世界最大手の一つに数えられ、歴史を誇る独立系の投資信託の販売・運用会社です。1946年にエドワード・C・ジョンソン2世が米国のボストンに資産運用会社を創設したことによってスタートし、それから半世紀以上にわたり、世界の主要なマーケットにおいて、個人投資家から機関投資家まで、幅広いニーズに対応した資産運用サービスを提供しています。
また、創業以来、経営の独立性を大切にするために株式を公開せず、顧客(受益者)のために働く「顧客第一主義」を貫き、長期ビジョンに基づいた経営が行えるプライベートカンパニーにこだわっています。
同社の名前である「Fidelity」は、忠誠を意味します。ミューチュアル・ファンドだけで300以上の基金を持ち、2,500万人以上の投資家との取引があり運用資産額は2016年現在で2.1兆ドル(約230兆円)とされています。
暗号通貨関連のサービスを全機関投資家向けに開放
フィデリティは2018年にFidelity Digital Asset Services(FDAS)という新会社を立ち上げて、暗号通貨に取り組むことを発表しました。
トレードサービスとカストディを提供していることは既に多くのメディアが報じている通りで、最近になって全機関投資家にそれらのサービスを開放しました。しかし、同社が暗号通貨関連企業に投資も積極的であることはあまり知られていません。
同グループによる暗号通貨関連企業への投資は、本体からではなくグループ内のVC業務を担当するデボンシャー(Devonshire)から実行されています。そしてその暗号通貨への投資部門はエイボン(Avon)という名称にリブランディングされています。同VC業務はフィデリティの金融サービスとは完全に分離されていると担当者が語っています。
将来の機関投資家需要を満たすさまざまなパーツがの投資先
Avonの投資先は将来の機関投資家需要を満たすさまざまなパーツとでも言えるようなポートフォリオです。執筆点で以下の3つの投資先が公開されています。
BlockFi
外部リンクBlockFiはレンディングプラットフォームです。ユーザーからレンディングによって調達した暗号通貨は、機関投資家顧客のレバレッジ取引やショートなどの需要に使用されます。
同社については下記のコラムでも解説しています。
関連:レンディングサービスBlockFiのユーザー層や、サービスの強みとはなにか?
Elementus
Elementusは、ブロックチェーンを分析してAMLに活用するサービスです。不正なトランザクションをラベリングしてブロックチェーン上で犯罪の疑いがあるアドレスをマークして、それらが取引所などのユーザー資産に混ざらないようにするツールを提供しています。この種類のビジネスではチェインアナリシス(Cchainalysis)が有名です。
Flipside Crypto
Flipside Cryptoは、機関投資家向け暗号通貨の分析ツールです。暗号通貨を従来の金融資産と同じようにさまざまなデータから分析ツールは今の所充実していません。暗号通貨の業界でもさまざまな数字からデータを分析するツールを開発する企業です。
前述のようにこれらの投資は本体のフィデリティとは分離して行われているとされますが、必要によって自社サービスとの連携も当然視野に入るでしょう。そして機関投資家に運用商品を提供するフィデリティとしては、上記3つの企業いずれもがビジネスに関連するものでしょう。
世界最大手の一つに数えられる投資信託の販売・運用会社であるフィデリティは暗号通貨に取り組むと報道をされ既に久しいですが、着々と周辺パーツもそろえている状況と言えるでしょう。
参考
・Fidelity has quietly rebranded its crypto VC — here’s a look inside the business
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・フィデリティ(Fiderity)が、ビットコイン(BTC)ベースの金融派生商品ファンドを支援
・【墨汁速報】フィデリティの機関投資家向けFDASのサービス開始。イーサリアムの取扱条件は?
・仮想通貨の強気相場は始まったばかりなのか?機関投資家によるOTC取引が増加
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