銀行間取引のデジタル通貨を発行することでサウジアラビアとUAE両国が最終合意

サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)両国はこのほど、両国共通のデジタル通貨を開発することを最終的に確認しました。デジタル通貨の名称はアベル(Aber)であり、当面は両国の銀行間の取引に利用されます。

両国中央銀行がデジタル通貨発行合意

UAEの日刊紙「TheNational」が2019年11月28日付で伝えたもので、協定書はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子とアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン皇太子兼UAE副総司令官の間で調印されました。デジタル通貨を発行する計画は、両指導者間ですでに合意に達していた4つの新しい政策提携の1つです。提携はそのほか、日量120万バレルの大規模な製油所建設計画が含まれています。

両国は18年12月、UAE中央銀行(UAECB)とサウジアラビア通貨庁(SAMA)との間で、銀行間デジタル通貨開発・利用の方向が確認されました。その際発表された声明文によると「UAECBとSAMAは、共有の仮想通貨と分散型台帳POC(概念実証)を実行する意向である。POCの意図するものは主として、参加国間で所有する中央銀行発行資産(仮想通貨)の移転に注力することである」と規定しています。

また銀行間デジタル通貨発行の目的について声明文は「現代的なテクノロジーと実践的なアプリケーションを通じたその実行可能性および送金コストの削減と技術的リスクとその処理に仕方の評価などを研究するため」と定義しています。

デジタル通貨の発行はイスラム教義(シャリーア)に抵触しないと確認

UAECBのムバラク・アル・マンスーリ総裁は、18年12月に行われた地域銀行の会合で、「異なる国の金融当局が、このような話題で協力することになるのは、恐らく初めてのことである。われわれはこの成果が地域全体の同様のコラボレーションに発展することを期待している」と語りました。

サウジアラビアとUAEの両国は過去に、ブロックチェーン技術がイスラム法に必ずしも抵触していないという理由で、研究・開発することを最終的に公式に認めました。例えばUAECBは、18年9月にイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を合法化する計画を承認しました。

またUAEアブダビにある政府系のアル・ヒラル銀行(Al Hilal Bank)は18年11月、ブロックチェーン技術を利用した初のイスラムボンド(Islamic Bond)「sukuk(スクーク)」を発行したと発表しました。発売されたイスラム債は総額5億ドル(約544億円)で、2023年9月満期の半公的債権となります。イスラム債とは、イスラム教義(シャリーア)に基づく有価証券です。

デジタル金融時代の到来に備える注目すべき動き

イスラム教は、金銭による金利の授受を禁じていますので、西欧の国債や社債とは違って、不動産など実物の資産取引の形で金利に替えます。sukuk.comによると、2017年のsukuk市場は979憶ドル(時価約10兆6,000億円)という巨大な市場であり、16年比50%増。デジタル通貨発行は、これらの動きの総決算として両国間のスムーズな銀行間取引を保証し、将来予想されるデジタル金融への対応を円滑に進める注目すべき動きです。

多くのブロックチェーン企業が近年、市場の機会を探る目的で成長の大きな可能性を秘める中東地域、特にデジタル通貨に寛容サウジアラビアやURAに集まっています。例えば韓国の最大手の仮想通貨取引所ビッサム(Bithumb)は19年2月、UAEに仮想通貨取引所を開設することに合意しました。また中国の取引所Huobiは最近、クラウドサービスを提供するため中東に進出しました。

参考
Saudi Arabia, UAE Leaders Confirm Plans to Launch Digital Currency
Saudi Arabia and the UAE Central Banks to Create Joint Token

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