2018年12月18日に、MicrosoftとNutrinoとHashHubの3社共催で、「ブロックチェーン・ビジネスサミット ~Beyond PoC~」が開催されました。本コラムではHashHubの共同創業者である平野淳也氏のスピーチを紹介します。
ブロックチェーンの価値とはなにか
オープニングのスピーチに登壇した平野氏は、「Why Blockchain Could be Next Big Thing」というタイトルでプレゼンテーションを行いました。
平野氏はまず、この10年間における成長産業が、スマートフォンというイノベーションの周辺にあったということを冒頭で説明。そして、なぜ次のイノベーションを探さなくてはならないのか、市場選択の重要性について語りました。
平野氏によると、ブロックチェーンは効率化のテクノロジーであるもののそれは「サーバーの効率化」や「通信処理の効率化」を進めるものではないといいます。
むしろ、P2Pのネットワークでさまざまなコンピュータが同じデータを持つので、ストレージコストは上がり、サーバーの効率化とは全く逆のことが起こります。
さらに、ノード間でどのデータが正しいかを合意するために、コンセンサスアルゴリズムを持ち込む必要があるので(ビットコインにおけるPoW)、さらにコンピューティングコストがかかることを指摘しています。
そういったコンピューティングリソースとストレージコストを使って得れる価値はなにか?平野氏は「ソーシャルコストの削減」であると説明しています。
信用のコストが削減されているからこそ、ビットコインのようなものがアセットになり、他にもさまざまなアセットが現在ブロックチェーン上で動いているという論理です。そして、これはより広く応用されるといいます。
ブロックチェーンはビジネスになるのか?答えは出つつある
しかし、「ブロックチェーンでどうビジネスにするのか?本当にお金になるのか?」と質問をする人がいます。
インターネットの初期の時代、わずか20年前にもBBCの記者は、アリババの創業者のジャック・マー氏に「インターネットでどうマネタイズをするんだ?」という同じ質問をしていました。
アリババは、今では中国を代表する企業ですが、たった20年前にそんな質問をされていたのです。その上で、今、ブロックチェーンに関して、当時のBBCの記者より質問の質が低いと平野氏は続けます。
これまでブロックチェーン領域で伸びてきた企業の共通点は、「オープンなプロトコルと社会を繋げていること」だといいます。
このことについて平野氏は、コインベース(Coinbase)やバイナンス(Binance)はアセットとしてのアクセスを社会に提供し、ビットメイン(Bitmain)はオープンなプロトコルのバリデートの機会を社会に提供し、 コンセンシス(ConsenSys)はイーサリアム(Ethereum)をより多くのデベロッパーが使えるようにしていると説明。
ビットコインやイーサリアムは、それだけではGitHubにあるクライアントでしかありません。それを適切な方法で、適切なアングルで、社会にブリッジすることがビジネスになるのでしょう。
恐らく、広義な意味で「オープンプロトコルと社会のブリッジ」はブロックチェーンのビジネスを考える上でずっと重要なキーワードになるだろうと平野氏は語っています。
なお、ブロックチェーン領域で、現在、価値がどこに集中しているかという点について、プレゼンテーションで使われたスライドが下記です。
厚いプロトコルと薄いアプリケーション、そしてその周りに集権的なビジネスレイヤーが存在しているのが現在の業界構造といえるでしょう。
ブロックチェーンが大きい領域になり得る5つの理由
プレゼンテーションの最後に平野氏は、ブロックチェーンが大きい領域になり得る5つの理由として下記を挙げました。
- これまで人類は大きな社会コストを払ってきたこと。この大きさがブロックチェーンが侵食する分量になり得る。
- ブロックチェーンは初めてアセットオーナーシップをインターネットに持ち込むことを可能にしている。
- 中央集権的なサービスと別の存在を選択肢として人々が必要としている。
- ブロックチェーンのプロトコルは高いネットワークエフェクトで成長する可能性がある。
- クラウド以外の広義な意味でのデータベースとしての新しい選択肢になり得る。
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