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大手保険会社のブロックチェーン活用計画

米国で2番目に大きな保険会社であるアンセム(Anthem)は、今後2~3年以内に約4,000万人の医療データをブロックチェーンで管理していく計画であることを発表した。現在は1週間に約30万ほどのヘルスケアデータに関するトランザクションが発生しており、Anthemが自社ソリューションのベースとして活用しているブロックチェーンシステムは、ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)、ハイパーレジャー・バロウ(Hyperledger Burrow)、ハイパーレジャー・インディ(Hyperledger Indy)が挙げられる。

紙の証券など、アナログ体制で続いている保険業界において、業務の効率性を改善する方法は多数存在するが、ブロックチェーンを活用した分散台帳管理は組織間ごとの情報共有を可能にしたうえで、対改ざん性も備えている。許可型のブロックチェーンであれば、誰が情報にアクセスできるかを調整できる仕様にすることも可能であり、情報共有に高い機密性が求められる金融や保険業界においては、有用性が高いと考えられる。

保険業界での実稼働進む

Anthemの最高デジタル責任者であるラジーブ・ロナンキ(Rajeev Ronanki)氏は、今後の方針やブロックチェーンプロジェクトのロードマップに関して、「Anthemでは既にブロックチェーンの利用が進んでおり、まだ開発中のプログラムも多くあります。現在では、合計で12の分野と領域で運用する計画をしており、これらの取り組みが人々のヘルスケアを促進させ、変革をもたらすことになると私達は予想しています」と発言している。

現在では約200人の従業員を対象にパイロットテストが行われている。スマートフォンなどのデバイスからQRコードを用いて、医療機関が所有する個人データへのアクセスを可能にすることや、その閲覧が完了すれば非公開にするといった、情報開示の仕組みに関する実験となっている。今後は顧客まで、段階的に実験の範囲を広げていくようである。

Anthemでは最終的に、保険金請求および給付に関するプロセスにおいて、これまでの業務フローをより迅速に処理できるようにしていく方針だ。ブロックチェーンの活用により、被保険者が治療を受けた医療施設や使用した医薬品などの情報へのアクセスを容易にすることから、ロナンキ氏は「個人情報を共有することなく、信頼できるパートナーシップを構築できます」とも述べている。

日本においても2024年を目途に行政に関わる手続きの9割を電子化に変えていく方針を示しており、保険業界への適応も注目していきたい。

参考
Anthem Will Use Blockchain To Secure Medical Data For Its 40 Million Members In Three Years

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