ポリチェーンキャピタル(Polychain Capital)は、サンフランシスコを拠点にするブロックチェーンに特化をするファンドです。ファンド規模は一時10億ドル(約1,100億円)を突破した、アメリカで最大のクリプトファンドです。その後、暗号通貨市場全体が下落していますが、証券取引委員会(SEC)の資料によると、2019年3月時点で5億9,510万ドルを運用していることが明らかになっています。
2億ドル調達に動く
Polychain Capitalは2016年にa16zなどから出資を受け創業以来、成長をしています。創業者のオラフ・カールソン・ウィー(Olaf Carlson-Wee)は、コインベース(Coinbase)の第一号従業員でもあり、同ファンドは、シリコンバレーエリアのブロックチェーン業界の中心プレイヤーです。これまでの主要投資先には、コインリスト(Coinlist)、ディフィニティ(Dfinity)、メイカーダオ(Maker DAO)、キン(Kin)、オーキッド(Orchid)、ポルカドット(Polkadot)、コスモス(COSMOS)、dYdXなどが含まれます。
同ファンドは、2号ファンドを組成中で2億ドル(約220億円)を調達しようとしていることが報道されました。米メディアのコインデスク(Coindesk)が取得した投資家向け資料によると、最低100万ドル・3年間のコミットメントから資金を受け付けることが明かされています。
1号ファンドは、1億7,500万ドルで組成され、投資戦略としては40%を既存のブロックチェーンインフラに関わるスタートアップへ投資して、60%はより実験的な企業へ投資がなされたとしています。
Polychain Capitalの投資戦略
投資家向け資料によると、Polychain Capitalの今後の投資戦略として、プライバシー・フレキシビリティ・カスタマイズ性があるネットワークが注力領域であるとしています。また、これまで投資しているプロジェクトと協調するようなプロジェクトにこれから投資していくことも示されていると言います。
これらからPolychain Capitalの投資戦略は大まかに考察ができます。同ファンドは、PolkadotやCOSMOS、Dfinityといった大型のパブリックブロックチェーンプロジェクトにこれまで投資をしています。PolkadotやCOSMOSは、それぞれ複数の独自ブロックチェーンからなるネットワークを形成するプロジェクトです。同ファンドはこれらのエコシステムを形成するプロジェクトに投資することに前向きなのだろうと考えられます。なお、Polkadotを推進するWeb3 FoundationとPolychain Capitalは、Polkadotのエコシステム拡大を目的としたファンドを設立したことを発表しています。
コアプロトコルのトークンにも投資をしながら、周辺のエコシステムに投資をして、エコシステム全体の成長に期待することがPolychain Capitalの投資方針であることが理解できます。Polychain Capitalは自身でそれらのトークンのステーキングも行っており、COSMOSのネットワーク等では、第三位のバリデータとなっています。
PolkadotやDfinityもメインメットがローンチされ次第、ステーキングを行うものと予想されます。あるいくつかのパブリックブロックチェーンに高いコミットメントをして、成長を期待する投資戦略はPolychain Capitalのような一定の規模があるファンドしかできる戦略ではありませんが、それがどのように機能するかは今後数年注目されるでしょう。加えて、COSMOS・Polkadot・Dfinityなどに投資をする投資家は、同ファンドの影響が強くなることを考慮して注目するべきです。
参考
・Polychain Capital Targets $200M for Second Venture Fund, Slide Deck Reveals
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