仮想通貨市場に影響を及ぼし始めた長引く米政府機関閉鎖

米国とメキシコ国境の壁建設をめぐるトランプ大統領と議会との対立で、政府機関が一部閉鎖して1カ月に迫った影響が、仮想通貨業界にも表れ始めています。

2019年1月16日時点で26日目となった政府機関の閉鎖の影響を受けて、米証券取引員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の業務停止が、仮想通貨をめぐる商品とサービスの承認業務などが停滞しています。

バックト(Bakkt)はじめ仮想通貨取引の認可が軒並み遅れ

影響をまともに受けたのは、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社であるインターコンチネンタル取引所(ICE)の新規事業、Bakkt(バックト)のビットコイン先物取引の認可の遅れです。Bakktは取引プラットフォームを築済みであり、1月14日には先物取引業者Rosenthal Collins Group(RCG)の買収を発表しましたが、プラットフォーム運用開始の1月24日までに、CFTCから承認されるかどうかは分かりません。

ナスダック・ベンチャーズ(Nasdaq Ventures)など有力投資家から最近2,750万ドル(約30億円)の資金を調達した仮想通貨取引プラットフォームのエリスX(ErisX)は、SECら職員が仕事に戻ることを待ちわびています。ErisXは規制上の先物取引・清算会社であり、CFTCの承認待ちです。

ErisXのトーマス・チッパス(Thomas Chippas)最高経営責任者(CEO)は「CFTCの業務停止後も、当社は引き続きプラットフォーム開発努力を続けている。われわれは現在の業務停止が解決され、当社DCO(デリバティブ清算機関)の申請について、CFTC関係者との交渉再開を望んでいる」と、あえて冷静にコメントしています。

上場投資信託(ETF)の上場承認決定に暗雲

政府機関の閉鎖は、取引所にとどまらず一部商品にも影響を及ぼし始めています。その代表的な商品が18年中に12件以上申請されている上場投資信託(ETF)でしょう。

SECは18年12月6日、VanEck、SolidX、CboeによるETF上場申請に伴う承認決定の審査は19年2月27日を最終期限とすることを通知しました。SECはそれ以前の他社による申請の可否決定をその都度何回も先送りしてきました。SECが、最終期限までに何らの決定もできないときは、現行法ではETF上場は承認されたものと見なされます。

ローウェンスタイン・サンドラー(Lowenstein Sandler)法律事務所のブローカー・ディーラー活動責任者のイーサン・シルバー(Ethan Silver)弁護士は、政府機関閉鎖が続いても残留スタッフでETF申請を拒むことは可能だとして、「彼らは専門的な事項を承認するというような立場に置かれるぐらいなら、それ以前に拒否することになるだろう」と語っています。

同氏によると、SECのスタッフは、拒否の理由として「市場の高潔性(一体性)」あるいは「緊急時対応」に言及することになるだろうと予測しています。

Kobre & Kim法律事務所のジェイク・チェルヴィンスキー(Jake Chervinsky)弁護士は、政府機関閉鎖がだらだら続く限り、SECは(ETF上場の)提案を拒む何らかの理由を見いだそうとするだろうと予見しています。

SECスポークスマンは問題処理にノーコメント

米国の仮想通貨市場では、デジタル資産を安全に取り扱うために、より一層の透明性と公式のガイダンスが求められています。規制上の活動はほぼ停止状態にまで鈍化していますので、仮想通貨業界グループは、上下両院議員が活動を再開するための連邦議会の努力を注視しています。

米ブロックチェーン協会のクリスティン・スミス(Kristin Smith)渉外部長は「税金、SECガイダンスなど多くの分野で切迫した懸案事項があるというのに、控えめに言っても、政府機関の閉鎖は近い将来、これらの問題を棚上げ状態に押しやってしまう」とコメントしています。

SECのスポークスマンは、切迫した問題の処理についてコメントせず、メールの自動返信では「連邦政府の歳出予算の執行停止によって、SECは当面閉鎖している。私はオフィスに出勤しておらず、閉鎖中はメールを確認したり、対応してもいない」といった返事が返ってくるようです。

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参考
Coindesk

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