コンサルティングファーム大手アクセンチュア(Accenture)が、ブロックチェーン技術を利用したSAM(ソフトウェア資産管理)アプリケーションを開発。同社がブロックチェーン領域に参入する意義について考察する。
アクセンチュア(Accenture)はどのような企業か?
アクセンチュアは元々、米国のトップ監査法人であったアーサー・アンダーセン(Arthur Andersen)に由来を持つ。1989年、同社のコンサルティング業を引き継ぐ形でアンダーセン・コンサルティング(Andersen Consulting)が分社化して誕生した。その後、両者の関係は悪化して、アンダーセン・コンサルティングは独立。2001年に社名を “accent” と “future” の造語である「accenture」と定めた。アーサー・アンダーセンは、世界最大規模の不正会計事件であるエンロン社の会計粉飾や証拠隠滅に関与した疑いから信用は失墜して、2002年に解散した。
現在、アクセンチュアの従業員数は全世界で約43万人、世界56カ国200年以上に拠点がある。メインとなる事業は、ストラテジー、コンサルティング、デジタル、テクノロジー、オペレーションズの5つで、幅広いサービスとソリューションを提供している。同社は、Fortune Global 500(米フォーチュン誌が年に1度発表している世界の企業を対象とした総収益ランキング)のうち約4分の3以上の企業と提携しており、イノベーションを促進している。また、40を超える業界およびあらゆるビジネス機能に専門的な知見を有している。
ブロックチェーンを利用したSAM(ソフトウェア資産管理)アプリケーションの開発
企業は、新規顧客の獲得や取引の効率化のため、さまざまなソフトウェアライセンスを購入して、システムに組み込み使用している。それらの膨大なソフトウェア資産を管理することは決して簡単なことではない。アクセンチュアは、この問題を解決するために、ブロックチェーン技術を利用したSAM(ソフトウェア資産管理)アプリケーションを開発した。
この新しいアプリケーションでは、スマートコントラクト言語であるDAMLを用いて、ソフトウェアライセンスイベントをモデル化して施行、追跡、監査する機能を提供する。同社は、世界中の企業を含むさまざまな顧客向けに、ソフトウェアライセンスを管理しなければならないため、そのソリューションを模索していた。このアプリケーションを利用することで、どの顧客がライセンスを取得しているか把握することが容易になり、ドキュメント作成を始めとする多額のコストを削減することが可能になる。
アクセンチュアのオペレーションの責任者であるMelanie Cutlan氏は次のように述べている。
“我々は、クライアントのソフトウェアライセンスのポートフォリオを管理している。ソフトウェア資産の追跡と管理をおこなうツールは進化をしているが、大規模な組織ではまだまだ課題が多い。分散台帳技術(DLT)によって、これらのライセンスの追跡が容易になるため、ライセンスの割り当てをすべて把握することができる。これによって、SAMに関するコストを年間何百万ドルも削減できる可能性がある。”
アクセンチュアによると、このアプリケーションは特許出願中であるようだ。同社は、ライセンス契約のないソフトウェアの使用や利用規約に遵守しないリスクを効果的に低減できると考えている。また、ライセンスの流動性と透明性を高めることを期待しているという。
アクセンチュアがブロックチェーン領域に参入する意義は大きい
筆者も以前アクセンチュアに籍を置いていたので肌で感じていることだが、同社のテクノロジー分野における影響力は大きい。もしアクセンチュアが本格的にブロックチェーン技術を利用したソリューションを企業に提供していけば、マスアダプションを促進する効果は十分ある。そして、モデルケースを作ることができれば、競合他社もブロックチェーン技術を無視することはできないだろう。同社の今後の動きに注目したい。
(文・師田賢人)
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参考:CoinSpeaker
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