日本における仮想通貨の支払いをめぐる状況はどのようなものでしょうか?2017年末をピークに、仮想通貨は投資対象として大きな盛り上がりをみせました。 しかし、仮想通貨の魅力は、投資対象としての側面だけではありません。これからは、仮想通貨を支払いの手段として用いることが増えていくでしょう。
本記事では、現在の仮想通貨決済の状況について消費者・事業者の両側面から解説します。
仮想通貨決済の方法とは?
ここでは仮想通貨を使って支払いをする方法を解説します。仮想通貨の支払いは、以下のような流れで行います。
- 日本円を取引所に入金する
- 取引所で仮想通貨を購入する
- スマホ・ウォレットに送金する
- 店舗のQRコードを読み込む
- 店舗が支払いを確認する
まず最初に、取引所に日本円を入金して仮想通貨を購入しましょう。決済に使われる通貨は、主にビットコイン(BTC)です。次に、購入した仮想通貨をお手持ちのスマートフォンのウォレットに送金します。ウォレットの機能を搭載していれば、どのようなアプリを用いても構いません。最後に店舗で商品を購入するとき、 店舗で提示されたQRコードをアプリで読み込みましょう。店舗が仮想通貨の支払いを確認したら、支払いは完了です。
仮想通貨支払いサービスの導入店舗
仮想通貨による支払いを受け付けている店舗は全国にたくさんあります。 個人商店のような小さな店舗からオンラインショップまでさまざまです。ここでは代表的な店舗を3つ紹介します。
1つ目は、家電量販店の「ビックカメラ」です。ビックカメラは、ビットコイン支払い導入店舗の先駆け的存在であり、オンラインショップをはじめ日本全国の全ての店舗で、ビットコイン支払いをすることができます。海外からのお客さんも多いことも理由のひとつでしょう。
2つ目は、旅行代理店の「H. I. S」 です。H. I. Sとビットコインの組み合わせは、意外に思われるかもしれません。H. I. Sのお客さんは海外旅行に行く人も多く、グローバル通貨でもある仮想通貨の保有者が多いのではないか、という経営判断ではないでしょうか。H. I. Sでは、都内9拠点33店舗でビットコイン支払いができます。
3つ目は、電気・ガス供給会社の「ニチガス」です。日々の電気代・ガス代をビットコインで支払うことで、月々の料金が割引されるというプランを提供しています。仮想通貨取引所コインチェック(Coincheck)でも同様のサービスを行っていますね。
もちろん大手だけではなく、小規模な個人商店でビットコイン以外の支払いを受け付けていた店舗もあります。しかし人気があった、ネム(NEM:XEM)による支払いができた、渋谷の「ネムバー(NEMbar)」、 モナコイン(Monacoin)による支払いができた高円寺の「モナバー(MONAbar)」は、2019年はじめに閉店してしまいました。
ただ、仮想通貨の認知度の向上とともに、このようなお店はどんどん増えていくと予想できます。
個人/法人店舗が仮想通貨決済を導入するとき
それでは、個人/法人店舗が仮想通貨決済を導入する時に、知っておくべきことを解説しましょう。これまでの説明は、あくまでも仮想通貨によって支払いをする「消費者」の立場でしたが、ここからは仮想通貨による支払いを受け付ける「事業者」の立場から解説していきます。
仮想通貨決済導入の方法は、店舗管理のウォレットに直接入金する場合と、仮想通貨の決済代行業者を利用する場合の2つに分けることができます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 店舗のウォレットに直接入金する場合
ここでは、店舗のウォレットにお客さんが直接入金する場合を解説します。この場合のメリットは、お客さんと直接やりとりをするため、業者を利用するときにかかる「決済手数料がかからない」ことです。
これに対して、デメリットは3つあります。
- 決済完了に10分以上かかる(ビットコインの場合)
- 価格変動で損をするリスク
- すべてを自分で管理する必要がある
まず、ビットコインのブロック承認時間は約10分であるため、取引(トランザクション)が完了するまで、お客さんは最低10分間は待たなければなりません。トランザクションが詰まっているときなどはそれよりもっと時間がかかる可能性もあります。また、支払いをしている間に価格が変動し、店舗側が損をしてしまうリスクもあります。 そして、業者を利用する場合と比べて、すべてを自分で管理する必要があるため非常に手間がかかります。
このように店舗のウォレットに直接入金する場合は、デメリットの方が大きい場合がほとんどです。そのため事業者は、これから紹介する仮想通貨の決済代行業者を利用する方が賢明でしょう。
仮想通貨の決済代行業者を利用する場合
ここでは仮想通貨の決済代行業者を利用する場合を解説します。
まず、デメリットから解説すると、ユーザーとの間に業者を挟むため、決済手数料が発生してしまうことです。ただ決済手数料は1%ほどと非常に少ないため、店舗側にとっての負担はあまり大きくありません。
これに対して、決済代行業者を利用するメリットは3つあります。
- 即時決済/即日入金が可能
- 価格変動のリスクを負わなくて済む
- UI/UXにすぐれた管理ツールを利用できる
1つ目は、即時決済/即日入金が可能であることです。即時決済が可能になることで、ユーザーは支払いの時に待たされずに済みます。 つまりユーザーは、クレジットカードや電子マネーを使うのと同じように、買い物をすぐに済ませることができます。即日入金は店舗の仮想通貨ウォレットに直接入金する場合も同様ですが、事業者にとっては資金繰りで悩む(クレジットカード支払いによる入金は1ヶ月後)必要がないため、大きなメリットとなります。
2つ目は、価格変動のリスクを負わなくて済むことです。多くの識者は、仮想通貨は価格の変動性が高いため、支払いの手段として利用することは難しいと指摘しています。ところが、決済代行業者を利用することで、価格変動のリスクを最小限に抑えることができます。
3つ目は、UI/UXに優れた管理ツールを利用できることです。 決済代行業者によって使い勝手は異なりますが、仮想通貨による支払いを管理するためのツールを提供しています。このようなツールによって、煩雑な手続きが不要になるので、事業者の負担を軽減することができます。
仮想通貨の決済代行業者の例としては、次のような事業者があります。
- bitWire SHOP(bitFlyer)
- PGマルチペイメントサービス(GMOグループ)
- CoinCheck Payment(GMOグループ)
仮想通貨決済サービス導入の手順と仕組み
最後に、仮想通貨決済サービスの導入の手順と仕組みを解説します。
仮想通貨決済サービスの導入手順を「bitWire SHOP」を例に見てみましょう。
出典:bitWire SHOP
アカウント作成から購入決済まで、非常に簡単に行えることが分かります。
仮想通貨決済サービスの仕組みは、「PGマルチペイメントサービス」を例に見てみましょう。
この場合、GMOとbitFlyerが、事業者と消費者の支払いのやりとりを裏側でサポートしています。これによって、前述したような「即時決済/即時入金」そして「価格変動リスク対策」を実現しています。
まとめ:仮想通貨の支払いサービス
ここまで、日本国内における仮想通貨決済の状況を一通り見てきました。
消費者側からは、どのように仮想通貨支払いを行い、どのような店舗で仮想通貨の支払いを受け付けているかなどについて、事業者側からは、仮想通貨の決済代行業者を利用するメリットやその導入手順・仕組みについてを解説しました。
これからは、日々の支払いに仮想通貨を利用できる機会が増えてくるかもしれません。そんな時に本記事の内容がお役に立てば幸いです。
(文・師田賢人)