みなさんは、DApps(分散型アプリケーション)について自信を持って説明することができますか?おそらくYESと答える人はあまり多くないでしょう。本記事では、DAppsの定義から分類や課題、具体的な活用事例まで網羅的に解説します。
DApps(分散型アプリケーション)の定義と分類
David Johnston氏による定義
DApps(分散型アプリケーション)は、”Decentralized Applications”の略称で、「ダップス」と発音します。DAppsの定義としてよく引用されるのは、DAppsの研究をしているデビッド・ジョンストン(David Johnston)氏による定義です。分かりやすくするために大雑把に意訳するとDAppsの定義は次の3つです。
- ユーザの合意により制御され、自律的に動作すること
- すべてのデータが公開ブロックチェーンに格納されていること
- アプリケーションの利用・運用にトークンが使われること
正確な内容を知りたい方は、原文をご確認ください。
Coinsutraによる分類
Coinsutraによる分類では、DAppsを3つのタイプに分類しています。順番に見ていきましょう。
タイプ①:独自のブロックチェーンを持つもの
タイプ①は、ビットコインやイーサリアムなどの独自のブロックチェーンを持つアプリケーションのことをいいます。PCを例にして考えると、OS(WindowsやMacOSなど)に該当します。タイプ①は、仮想通貨そのものを指しますので、DAppsであるという認識を持つ人は少ないでしょう。
タイプ②:タイプ①のブロックチェーンを利用するもの
タイプ②は、タイプ①の持つブロックチェーンを利用して作られたアプリケーションを指します。ほとんどのものは、イーサリアムのブロックチェーンをベースとしています。DAppsと言われた時に、真っ先に思い浮かぶのがタイプ②だと思います。後ほど、具体例を紹介します。
タイプ③:タイプ②のプロトコルを利用するもの
タイプ③は、タイプ②のプロトコルを利用して作成されるアプリケーションです。現在のところ、あまり数は多くありませんが、今後もっと発展していくことが予想されます。
DApps(分散型アプリケーション)のメリット
ここでは、DAppsのメリットを3つ解説します。
システムが半永久的に稼働する
DAppsは、世界中に分散して存在するネットワーク参加者により管理・維持されているため、もし一部に問題が発生しても、システムは稼働し続けます。難しい言葉を使うと、「単一障害点がない」ということです。
データが改ざんされる可能性が低い
DAppsは、ブロックチェーン技術を活用したアプリケーションです。そのため、一度チェーンに記録されたデータを後から変更することが現実的に不可能です。この特徴は、データの信頼性が重要な意味を持つアプリケーションにとっては、極めて有用です。
中間搾取をなくすことによるコストの削減
現在、さまざまな取引において当事者を仲介する中央管理者が存在します。例えば、国際送金をしようと思ったら、金融機関を介さなくてはなりません。すると当然、仲介者に手数料を支払う必要があり、コストがかかります。DAppsは、当事者間で直接、取引を行うことができるため、コストを削減することができます。
DApps(分散型アプリケーション)の抱える問題
スケーラビリティ問題
スケーラビリティ問題とは、ネットワーク内の取引数が増加することにより「処理速度の遅延」と「手数料の高騰」が起こることです。DAppsが普及するためには、スケーラビリティ問題を解決しなくてはなりません。現在、スケーラビリティ問題を解決するために、さまざまなソリューションが検討されています。
ユーザビリティが低い
DAppsの問題として、ユーザビリティつまり使いやすさが低いということがあります。DAppsの多くは、一般ユーザが利用するように設計されていないからです。ただ、スケーラビリティ問題が解決されDAppsの数が多くなってくれば、分かりやすいDAppsも生まれてくる可能性は高いです。
Dapps(分散型アプリケーション)の利用シーン
ゲーム
DAppsの利用シーンとして最初に挙げられるのが、ブロックチェーンを活用したゲームです。例えば、クリプトキティ(Cryptokitties)やイーサエモン(Etheremon)、ビットペット(BitPet)などのゲームが人気です。
DAppsゲームの特徴は、ゲーム内のキャラクターやアイテムをトークンにしてマーケットで販売することが可能な点です。これによって、もしゲームに飽きてしまってもトークンを売ることで今までの労力を無駄にせずに済みます。
DEX(分散型取引所/Decentralized Exchange)
みなさんに馴染みのあるビットフライヤーやコインチェック、バイナンスなどは管理者が存在する取引所です。これに対して、管理者不在で稼働する取引所のことをDEX(分散型取引所)といいます。一般的には、手数料が安く、安全性が高いといわれています。具体的には、0x(ゼロエックス)やBancor(バンコール)、Kyber Network(カイバーネットワーク)などのプロジェクトが、DEXの開発を進めています。
未来予測市場
未来予測市場とは、未来に関する予測をして、もしそれが当たると報酬が支払われる仕組みです。例えば、オンラインカジノをイメージしてください。オンラインカジノは、運営側による不正や割高な手数料など、さまざまな問題があります。しかし、ブロックチェーンを利用して未来予測市場を作れば、それらの問題を回避することができます。Augur(オーガー)やGnosis(ジーノーシス)が未来予測市場の開発に取り組んでいます。
身分認証
インターネットを利用していると、オンライン決済やサービス利用の時に、いちいち個人情報を入力しなくてはならず不便です。これを解決するのが、uPort(ユーポート)を始めとするDAppsです。uPortでは、個人情報をブロックチェーン上で安全に管理することで、身分認証の利便性を高めることを目的に開発が行われています。
分散型ストレージ
分散型ストレージでは、次のようなことが可能です。
- 余っているストレージを販売しトークンをもらう
- トークンを支払うことでストレージを買い取る
これによって、ストレージを効率的かつ流動的に運用することができます。分散型ストレージに取り組んでいるのは、Storj(ストレージ)と呼ばれるDAppsです。
まとめ
本記事では、DAppsをさまざまな視点から解説しました。DAppsに対して漠然としたイメージしか持っていなかった方も、具体的にDAppsについて理解することができたのではないでしょうか?DAppsはまだまだ登場したばかりの分野です。世の中の多くの人に使われるためには、まだまだ時間がかかるかもしれませんが、じわじわと普及していくでしょう。Dappsの動向に注目しましょう。
(文・師田賢人)