仮想通貨ではなく証券トークン専門の取引所を予定するスイス証券取引所(SIX)

証券トークンを主とする取引所

スイス証券取引所(SIX Digital Exchange)が、セキュリティートークンの取引所および、取引所自体もトークンを発行する可能性を検討していると報道されました。今夏にもパイロットモデルを公開し、来年の上半期にトークン化した証券を取引できるマーケットを運営開始することが予定されています。

既存の証券取引所がセキュリティートークンに関連するマーケットをこれだけ早いタイムラインで公開することはインパクトが大きいと言えます。同取引所では、STO(セキュリティー・トークン・オファリング)という呼び方ではなく、イニシャル・デジタル・オファリング(IDO) という名称を利用していますが、基本的には一般的に定義されているSTOと同等に考えて良いでしょう。

ローンチ時点で複数の会社の証券トークンや不動産を証券化したトークンがリストされる予定です。通常のIPOと同じようなプロセスを経て、発行体はトークンを発行し、引き受け証券会社が公開価格の決定、公募をしてトークンはマーケットに上場されます。さらに、同取引所では、既存の証券などもトークン化して、うまくいけば2021年に実現したいと述べています。

暗号通貨の上場予定はなし

スイス証券取引所はここまでトークン化などに積極的でも、現段階でビットコイン(BTC)など暗号通貨を上場させる予定はないとしています。理由は、市場の不透明さであるとしています。これは、アメリカでビットコインのETFがこれまで毎回否決をされていることと同じ理由です。

現在の取引量の多くは、実際に行なわれた取引ではないフェイクボリュームであるという研究も複数の機関がレポートを出しており、そういった状況は既存の証券取引所が扱うことを難しくしています。

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しかし、規制された暗号通貨の流動性プールに接続する形で取引を提供することは有り得るといいます。今後、証券ブローカー各社などが暗号通貨の取扱いを始めることについては、この流れと重なります。

証券取引所が目指すトークンエコノミー

同証券取引所では、すでにBTCやイーサリアム(ETH)の除外投資商品(EIP)、主要暗号通貨をパッケージしたEIPのトレードを開始しています。これらはリンク債のようなもので、ユーザーは実際に暗号通貨を保有するのではなく、それらの値動きをトレースし同等の損益を享受する商品です。同プロジェクトは70人のチームになっており、使っている予算は少なくとも二桁億円を使用していると言います。

証券取引所が、セキュリティートークンにここまで投資をして、プロダクションレベルの開発を行っていることは珍しい事例です。夏のパイロットプロダクトの反響次第では、他の投資家に影響を与えるでしょう。

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参照
Bitcoin.com
CoinDesk
Finews


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