G20が資金洗浄やテロ資金防止で仮想通貨の規制強化、国際課税システム構築へ

アルゼンチンで開かれたG20首脳会議(2018年11月30-12月1日)は、米中、米ロの対立による貿易戦争あるいは新たな冷戦の可能性に直面した難しい情勢の中で開かれました。その中で、共同宣言に盛り込まれた仮想通貨の問題がどうなったのかについて、大手メディアの反応は鈍かったようです。

ようやくまとまった共同宣言や現地報道を読んで見ますと、仮想通貨の課税問題などいくつかの対策が協議され、利害関係者には重要な問題が取り上げられました。

国際的課税問題と資金洗浄など2020年までに提言まとめる

G20は、国際的に不統一な仮想通貨の課税問題で協力することで一致し、宣言の中に盛り込みました。共同宣言には、仮想通貨課税に対する「国際的な決済システムの確立」が必要であることを初めて触れています。そのこと自体軽視できないのは、外国企業に越境して課税することは合法か違法かの問題に関連しているからです。

G20首脳会議はまた、マネーロンダリング(資金洗浄)防止やテロ資金調達に重大な関心を表明、改めて仮想通貨に関連する提言を2020年までにまとめることになりました。

共同宣言では、関係者が仮想通貨の問題でいくつかの提言をまとめ、19年に日本が主催するG20首脳会議で協議、最終的に20年までに成案する意思を確認しました。その中にはもちろん、国際的な課税システムの確立も含まれています。

G20の諮問機関である金融安定理事会(FSB)は10月、これまでよりもやや警戒心の強い悲観的な報告書を公表、その中で仮想通貨市場がさらに成長すれば、仮想通貨が金融の安定にいくつかの潜在的脅威になりうるとの初の結論に達しました。FSBは、仮想通貨を「法定通貨の主要特性に欠けている」と断定して、金融規制当局者、金融機関、国民にとって有害になりうると指摘しています。言うまでもなく、仮想通貨問題に関するG20の討議は、FSBの報告書が大きな影響を及ぼします。

オープンな金融システム堅持と仮想通貨規制の国際基準づくり

FSBが仮想通貨に関連して指摘したリスクは、市場の流動性、ボラティリティ、レバレッジ、テクノロジーリスク、制度化などです。FSBはG20構成国の金融官庁と中央銀行など68機関で構成されています。イングランド銀行のマーク・カーニー(Mark Carney)総裁が議長を務めるFSBは、それ自体は権限を行使できず、G20サミットに政策提言する諮問機関です。

G20首脳会議では、オープンな金融システムが経済成長を支えるために必須であることを確認しましたが、同時に仮想通貨など新しいテクノロジーをどこまで規制するかの国際基準の必要性を呼びかけました。共同宣言は「われわれは金融部門におけるテクノロジーの恩恵は、リスクが軽減された上で実現されるべきだとの努力を強化する」と述べています。

金融活動作業部会(FATF)の規制基準の沿った政策推進を確認

G20はまた、金融活動作業部会(FATF)が採択した規制基準に準じて規制を進めることを確認しました。共同宣言は「われわれはFATF基準に沿ってマネーロンダリグ防止およびテロリズムの資金調達に対抗するために、暗号資産を規制し、必要に応じてそのほかの対応も考慮する」と述べています。

要約すれば、G20首脳会議は今回、仮想通貨について以下の2点を確認しています。

  • 現代の国際課税システムに基づき、公正、持続可能かつ現代的な国際課税システムへの向上に向け努力を続ける。多国間の税務行政執行共助条約にすべての法域が署名、批准すべきである。
  • オープンで国際基準に基づいた金融システムは、持続可能な成長にとって重要である。金融活動作業部会(FATF)の基準に基づいて、仮想通貨を規制し、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金調達・供与を防止し、必要であれば他の対策も検討する。

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「仮想通貨の規制整備に2年以上必要」英国の法律専門家の見解

参考
G20

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