
トークンは証券に当たらない可能性
米国の証券取引委員会(SEC)金融局で局長を務めるウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏が、ワシントンで開催されたフィンテックフォーラムで、「1年以上前にイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を行ったプロジェクトの中でも、そのいくつかは既にSECによる制裁などを受ける必要はない」と発言しました。SECの職員が公式の場でこのような発言をしたことは大きいトピックと言えます。
プロジェクトが発行したトークンが、証券に当たるかそうでないかで頭を悩ませていたことは多くの人が知る通りです。トークンが証券に該当すると何が問題であるかについてですが、証券であればSECの管轄で証券法で監督されることになります。つまり、ICOという形で不特定多数の個人投資家に公募販売をしていたプロジェクトは、未登録証券を違法な形で販売していたとされ、制裁金が課されます。
さらに証券と認められたトークンは、証券ブローカー・ディーラーの認可を持っている業者しか取引場所を提供できないため、多くの暗号通貨取引所からも取扱を注視されることになります。
こういった理由から証券性の有無は非常に重要なトピックでしたが、SECは今回、トークンは証券として扱われない場合もあることを認めました。トークンの性質として、ある時期は証券と言えるものでも、成熟すると証券で規制されないアセットに変化する場合があるということです。
この典型的な例を上げるとするならば、プラットフォームとしてのイーサリアム(Ethereum)におけるネイティブトークンである、イーサリアム(ETH)でしょう。
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ETHはICO時点では、恐らく証券性が強いと扱われるべきものでしたが、現在はコモディティとして扱われています。
証券ではなくなる条件とは
アメリカでは一般的に証券として扱うかどうかの基準は、「ハウェイ・テスト(Howey Test)」という枠組みによって判断されます。以下の3つの要素を満たすと、証券として扱われると言って良いでしょう。
- 金銭の投資を受けている
- 共同事業性がある
- 事業を遂行する人がいて、投資家は事業者遂行者の努力による利益を期待している
イーサリアムを事例に考えると、2015年のICO時点においては、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏ら、数名の創業者の仕事に多くの人が期待をして、ICOに参加をしました。これは上記に当てはめて考えると、証券的であると言えます。
しかし、2019年の現在において、イーサリアムのエコシステムには数多くの開発者が存在し、創業者の働きに期待するようなものでもなくなっています。つまり、はじめは証券性が高かったものでも、今は証券性が薄くなっているのです。これはブロックチェーンのトークンの経済圏の特徴です。
SECは、この他にも、ターンキー・ジェッツ(TurnKey Jet)が発行したトークンは、すでにユースケースが確立されており、エコシステムが成熟しつつあることから、同社に制裁を行なわない旨の通告をしています。
一方で、トークンはローンチ時点では証券であり、エコシステムが成熟すると証券ではなくなる性質があることをSECが認めても、具体的にどの時点から証券性が薄れるか、証券として扱われなくなるかは明確ではありません。この点で、メッセージングアプリのキック(Kik)は、SECに同社トークンの証券性を指摘されたことに不服を示し、係争が行なわれています。
その当時の状況はこちらの記事にて、詳細が書かれています。今後、米国では、暗号通貨・トークンのこのような特徴を踏まえた上で、規制の設計について議論が行なわれると考えられます。
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参照
・coindesk
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